HPV高リスク型と関連がん(男性の陰茎がん、女性の子宮頸がん)

目次

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性行為を通じて感染するごく一般的なウイルスで、100種類以上の型があります 。これらのHPVは、発がん性によって大きく2つに分けられます。

  • 低リスク型HPV: 主に良性のイボである尖圭コンジローマの原因となります(HPV6型、11型など) 。
  • 高リスク型HPV: 特定のがんの発生に深く関わります。特にHPV16型と18型は、子宮頸がんの約65% 、男性の陰茎がんの約31% の原因とされています。

性行為の経験がある方の多く(女性では8割以上)が一生に一度はHPVに感染すると言われるほど、非常にありふれたウイルスです 。しかし、感染してもほとんどの場合、ご自身の免疫力で自然にウイルスが排除されます 。

大切なこと: HPVに感染したからといって、必ずしもがんになるわけではありません。感染者の約90%は、ウイルスが自然に消えていきます。

なぜがんになるの?

ごく一部のケースで、ウイルスが長期間体内に残り続ける「持続感染」の状態になると、細胞に異常な変化(「異形成」と呼ばれる前がん病変)が起こることがあります 。この異形成も、自然に治ることもありますが 、さらに進行するとがんへと発展する可能性があります。

HPV感染からがんになるまでには、数年から数十年という長い時間がかかります 。この長い期間があるからこそ、定期的な検診や適切な予防が非常に重要になります。

 

男性における高リスク型HPV関連がん:陰茎がん

陰茎がんは、陰茎の亀頭や包皮にできる比較的まれながんです 。日本では人口10万人あたり0.4〜0.5人程度と報告されており 、60歳以上の男性に多く見られます。

陰茎がんの原因とリスク

陰茎がんの約31%は、HPV16型や18型といった高リスク型HPVの感染が関連していることが分かっています 。その他、包茎、喫煙、生殖器の不衛生などもリスクを高めると言われています。

症状

陰茎がんの初期には、痛みなどの自覚症状がほとんどないことが多いです 。そのため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。進行すると、排尿がしにくくなるなどの症状が現れる場合があります。

診断と治療

診断

医師による視診や触診に加え、病変の一部を採取して顕微鏡で調べる「組織診」で確定診断を行います。

治療

がんの進行度合いによって治療法が異なります。

o初期の場合:陰茎の一部を切除する手術や、放射線治療、抗がん剤の軟膏など、陰茎の機能をできるだけ温存する治療が選択されます。
o進行している場合:陰茎の部分切断や全切断が必要になることがあります。リンパ節への転移がある場合は、リンパ節を切除する手術も行われます。
o転移がある場合:抗がん剤による全身治療が行われます。

予後(治療後の見通し)

陰茎がんは、早期に発見されれば比較的良好な予後が期待できます。I期やII期で発見された場合の5年生存率は90%と報告されています。しかし、進行すると生存率は低下します。治療後も再発の可能性があるため、定期的な経過観察が重要です。

 

女性における高リスク型HPV関連がん:子宮頸がん

子宮頸がんは、子宮の入り口部分にできるがんで、そのほとんど全てが高リスク型HPVの感染によって引き起こされます。日本では年間約1万人が子宮頸がんと診断され、約2,900人が亡くなっています。特に近年、若い女性の子宮頸がんが増加傾向にあることが問題視されています 。

子宮頸がんの原因とリスク

子宮頸がんの主な原因は、高リスク型HPVの持続感染です 。性交渉でHPVに感染しても、多くは自然に排除されますが、ウイルスが排除されずに長期間感染が続くと、がんになるリスクが高まります。喫煙もリスクを高める要因の一つです。

症状

子宮頸がんの初期には、自覚症状がほとんどありません。そのため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。進行すると、性交時の出血、不正出血、おりものに血が混じる、下腹部の痛みなどの症状が現れることがあります。下腹部や腰の痛み、尿や便に血が混じる場合は、かなり進行している可能性があります。

診断

o子宮頸がん検診: 20歳以上の女性は2年に1回、定期的に検診を受けることが推奨されています 。問診、視診、子宮頸部の細胞を採取して調べる「細胞診」、内診が基本です。
o精密検査: 検診で「要精密検査」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。コルポスコープ(拡大鏡)を使った詳細な観察や、組織の一部を採取する「組織診」、HPV検査などが行われます。

治療

o前がん病変や初期のがん: 子宮頸部の一部を円錐状に切除する「子宮頸部円錐切除術」が行われることがあります 。これにより子宮を温存できる場合がありますが、その後の妊娠・出産に影響が出る可能性もあります。
o進行している場合: 子宮の一部または全部を切除する手術(子宮全摘出術)や、放射線治療、抗がん剤治療などが選択されます 。

予後(治療後の見通し)

子宮頸がん全体の5年相対生存率は76.5%です。早期に発見されれば、I期で94.9%と非常に高い生存率が期待できますが、進行すると生存率は著しく低下します(IV期で25.9%)。このため、症状がなくても定期的に検診を受けることが、命を守る上で極めて重要です。

 

男女共通のHPV関連がん予防と早期発見の重要性

HPVは、陰茎がんや子宮頸がんだけでなく、男女共通の肛門がんや中咽頭がん、女性の外陰がん、膣がんなど、様々な病気の原因となります。

コンドームの使用

コンドームはHPV感染を完全に防ぐことはできませんが、性行為における皮膚や粘膜の接触を減らすことで、感染リスクを大幅に低減する効果があります。

定期的なチェックと医療機関への相談

o•女性:20歳になったら2年に1回、定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。症状がなくても検診は非常に重要です。
o•男性: ご自身の陰茎に異常(しこり、ただれ、変色など)がないか定期的に自己チェックを行い、気になる症状があれば速やかに泌尿器科を受診しましょう。

ご自身の健康状態や性感染症について不安がある場合は、迷わず医療機関(女性は婦人科・産婦人科、男性は泌尿器科など)に相談し、専門家のアドバイスを求めましょう。

 

高リスク型HPV関連がんの比較

項目 陰茎がん 子宮頸がん
主な原因HPV型 HPV16, 18型など (約31%が関連) HPV16, 18型など (ほとんど全てが関連)
日本での発生率 人口10万対0.4〜0.5人程度 人口10万対16.0例
主なリスク因子 HPV感染、包茎、喫煙、生殖器不衛生 HPV持続感染、喫煙(IgA/IgG)
主な症状 初期は無症状、進行すると排尿困難など 初期は無症状、進行すると性交時出血、不正出血など
主な診断方法 視診、触診、組織診 細胞診、HPV検査、コルポスコピー、組織診
主な治療法 手術(温存療法、切断術)、放射線治療、薬物療法 手術(円錐切除術、子宮摘出術)、放射線治療、薬物療法
5年生存率 I・II期:90% 全体:76.5% (I期: 94.9%, IV期: 25.9% )
予防策 HPVワクチン接種、自己チェック HPVワクチン接種、定期検診
 

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