梅毒とくちびる:口唇に現れる症状(口内炎との違い)から予防・検査・治療まで徹底解説

目次

   

近年、梅毒の患者数は増加傾向にあり、特に20代〜30代を中心に感染が広がっています。その中でも、口唇や口腔内に症状が現れる「口唇梅毒」は見逃されやすく、初期段階で適切な対応が極めて重要です。
口唇にできるただの口内炎だと思って放置すると、症状が進行して全身に影響が及ぶことや、周囲の人への感染リスクが高まる恐れがあります。

また、梅毒は症状が軽度な場合もあり、自覚症状がほとんどないことも多いため、「自分は大丈夫」と思ってしまう人も少なくありません。
しかし、感染から放置期間が長くなるほど、体への負担は大きくなります。特に口唇梅毒は初期症状が軽いため、知らずに他者へ感染させてしまうリスクもあります。

本ページでは、口唇に現れる梅毒の症状や、口内炎との違い、感染経路、予防方法、検査・治療の流れについて、あおぞらクリニックの知見をもとに詳しく解説します。
口唇梅毒に関する正しい知識を身につけ、安心して日常生活を送るための参考にしてください。

早期解決へ

口唇に現れる梅毒の症状

梅毒は感染後の経過によって症状が段階的に変化します。
口唇や口腔内に現れる症状も、1期梅毒と2期梅毒では特徴が異なります。
症状を正しく理解することが、早期発見・早期治療につながります。

1期梅毒の口唇症状

1期梅毒では、感染部位に硬結性潰瘍(しこり状の潰瘍)が現れます。
口唇や口の中にできることもあり、特徴は以下の通りです。

⚫︎痛みはほとんどない:

初期の潰瘍は触ってもほとんど痛みを感じません。そのため、本人が感染に気づかないことが多く、知らずに他者へ感染させる可能性があります。

⚫︎潰瘍の形状と硬さ:

周囲が硬く盛り上がり、円形や楕円形の潰瘍になることが多く、底は平らで赤みを帯びています。口唇の色とのコントラストで目立つ場合もあります。

⚫︎症状の自然消失:

潰瘍は1〜6週間で自然に治ることがありますが、これは完治ではありません。体内には菌が残っており、放置すると2期梅毒へと進行するリスクがあります。

⚫︎見た目が口内炎やヘルペスに似ている:

初期症状は非常に似ているため、自己判断で放置すると症状が悪化することがあります。疑わしい場合は必ず検査を受けることが重要です。

梅毒潰瘍性病変

梅毒潰瘍性病変
情報元:CMAJ>

2期梅毒の口唇症状

感染後数週間〜数か月で全身症状を伴う2期梅毒に進行していきます。2期梅毒では、口唇・口腔内の症状は次のように現れます。

⚫︎赤い斑点や潰瘍が口唇・口腔内に出現:

舌や口腔粘膜にびらんや斑点が出現し、口腔内の違和感や軽度の痛みを伴うことがあります。

⚫︎全身症状を伴う場合もある:

発熱、倦怠感、リンパ節腫脹が見られることがあります。また、手足や体幹に皮疹が出ることもあります。

⚫︎症状の自然改善後にも注意:

1期と同じように時間の経過とともに症状が消失することがあります。このように症状がほとんどみられなくなる時期を潜伏期といいます。この潜伏期の間も体内に菌は存在し、感染力も残ったままです。

口腔第二期梅毒

口腔第二期梅毒
情報元:Suzuki K, et al. A Case of Isolated Oral Secondary Syphilis. JMA Journal. 2021; 5(1): 180. DOI: 10.31662/jmaj.2021-0180. Licensed under CC BY 4.0.>

口内炎との違い

口唇や口腔内にできる潰瘍は、一般的な口内炎と似ている場合があります。見分けるポイントは以下です。

項目

口唇梅毒

一般的な口内炎

痛み

ほとんどなし

痛みを伴うことが多い

硬さ

しこり状で硬い(軟骨のような硬さ)

柔らかいことが多い

単発が多い

複数の場合もある

経過

1〜6週間で自然に治るが再発の可能性あり

数日〜1週間で治ることが多い

周囲の赤み

明瞭に境界があることが多い

赤みはぼんやりしていることが多い

感染経路

口唇梅毒の主な感染経路は、オーラルセックスや粘膜接触です。感染部位の粘膜に直接接触することだけでなく、唾液でも感染する可能性はあります。具体的には以下のようなケースがあります。

⚫︎感染者とのオーラルセックス:

感染者の口唇や口腔内の潰瘍、発疹に直接触れることで感染する可能性があります。潰瘍は痛みが少ない場合が多く、本人も気づかないことがあります。

⚫︎キスや唇の接触:

性行為だけでなく、キスなどの唇同士の接触でも感染することがあります。特に潰瘍や発疹がある場合は注意が必要です。

⚫︎共用タオルや食器による感染は稀:

口唇梅毒は直接の粘膜接触による感染が主です。ただし、口腔内や口唇に傷がある場合は理論上感染の可能性があるため注意しましょう。

感染経路

予防方法

⚫︎コンドーム・デンタルダムの使用:

オーラルセックスや性行為時に使用することで、感染リスクを大幅に減らせます。
初めてのパートナーや感染リスクが不明な相手との性行為時は、必ず使用することが推奨されます。
ただし、100%感染を防ぐことが出来るものではないことに注意する必要があります。

⚫︎パートナーとの健康状態の確認:

新しいパートナーが出来た場合などには、性感染症の有無を事前に確認することは重要です。口唇や口腔内に潰瘍や発疹がある場合は、性行為を避けることが望ましいです。

⚫︎定期的な検査:

自覚症状がなくても、過去に感染リスクのある性行為を行った場合は、定期的に検査を受けることで早期発見が可能です。
特に梅毒は初期症状が軽く見逃されやすいため、症状がなくても検査を受けることをおすすめします。

⚫︎口唇や粘膜の傷に注意:

口唇や口腔内の小さな傷、口内炎、歯磨きや食事による傷口も感染の入り口となる可能性があります。
傷がある場合は、パートナーへの接触を避け、必要に応じて保護や治療を行うことが望ましいです。

⚫︎感染リスクが高い期間は接触を避ける:

パートナーに症状がある場合や、治療中は感染の可能性が高くなるため、唇や口腔内の接触を避けることが重要です。
感染拡大を防ぐためには、症状がなくても注意深く行動することが求められます。

検査方法・治療方法

あおぞらクリニックでは、口唇梅毒の疑いがある場合、以下の方法で正確に診断できます。

⚫︎症状に応じた診察:

問診や症状の診察を行い、必要に応じて採血による検査を行います。

⚫︎血液検査(血清反応検査):

梅毒の診断には、TP抗体検査とRPR検査を用います。
どちらの検査を実施するかは、既往歴の有無や、感染の可能性があった時期からの経過日数などを総合的に判断して、片方のみ、または両方を組み合わせて行います。

⚫︎治療:

梅毒はペニシリン系抗菌薬の内服等の適切な治療を行うことで完治する病気です。
アレルギーがある場合などは他の抗菌薬で代替治療が可能です。

⚫︎治療後の経過観察:

血液検査で抗体価の変化を確認し、医師が治療の効果を評価します。
パートナーへの通知や感染予防策を徹底することが重要です。

流れ

受診の目安

⚫︎口唇や口内にしこりや潰瘍がある場合
⚫︎痛みのない口内炎が長く続く場合
⚫︎赤い斑点や発疹が口内に出現した場合
⚫︎症状なくても過去に性行為で感染リスクがあった場合

よくある質問(Q&A)

Q1:口唇に小さな潰瘍があります。口内炎との見分け方は?
A:口唇梅毒は痛みがほとんどなく、しこり状で硬いのが特徴ですが、症状には個人差がありますので、血液検査で確定診断を行うことが重要です。

Q2:オーラルセックスで梅毒に感染する可能性はありますか?
A:はい、感染者の口唇や粘膜に接触することで感染します。初期段階は感染に気づいていない等で特に感染リスクが高まります。

Q3:治療せずに放置するとどうなりますか?
A:時間の経過とともに第2期、第3期、第4期(晩期)梅毒へ進行し、全身症状や神経・心臓への影響が出ることがあります。早期治療が最も重要です。

Q4:治療後に再感染することはありますか?
A:はい、治療で完治しても、新たな接触で感染する可能性があります。パートナーへの通知や感染予防策を徹底することが大切です。

Q5:検査は匿名で受けられますか?
A:あおぞらクリニックでは、匿名検査に対応しています。プライバシーを守りながら安心して受診できます。治療でお薬の処方がある場合は、法律の関係上お名前が必要となります。

Q6:治療後、口唇梅毒の症状が改善した場合、完治したといえますか?
A:外見上症状が消えても、菌の感染力が残っている可能性があります。血液検査で抗体価を確認し、医師の指示に従ってフォローアップすることが必要です。

Q7:パートナーに伝えるべきですか?
A:梅毒は主に性行為によって感染するため、パートナーへのお知らせはとても重要です。 ご自身が治療を受けて完治しても、パートナーが感染したままの場合、再びご自身が感染する可能性があります。相互の再感染を防ぎ、安心して過ごすためには、相互に治癒した状態になることが重要です。

まとめ

口唇に症状が現れる梅毒は、初期症状が軽く見逃されやすいため、自己判断は危険です。口内炎との違いを理解し、感染リスクがある場合は早期に検査を受けることが大切です。

症状が軽くても、早期対応が安心・安全につながります。気になる方は、あおぞらクリニックで専門医の診察と検査を受けましょう。

 

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