性器ヘルペスは感染経路を性的接触とする性感染症の一つで、男女ともにかかってしまう病気の一つです。
性器ヘルペスは単純ヘルペスウィルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染によって、性器に浅い潰瘍性または水疱性病変を形成する疾患です。
男性の感染部位は性器や肛門(または口唇)周辺の皮膚・粘膜が挙げられます。
症状は、赤茶色の水ぶくれや、神経痛などの痛みを伴う場合があります。体調や疲労具合によっても症状が悪化する場合もあり、初めて感染した場合は症状が強く出やすいとも言われています。
女性の感染部位は、①膣周辺や肛門(または口唇)付近の粘膜やお尻や太ももなど周りの皮膚、また膣内、子宮頸管、膀胱が挙げられます。
症状は、小さな水泡がたくさんでき、痛みを伴うことが多いです。初発時など症状が重い時は、感染した部分が腫れたり、発熱することもあります。中には、痛みで歩くことさえ辛い場合があります。
HSVは性器に感染すると神経を伝って上行し、主として腰仙髄神経節などに潜伏感染します。
潜伏感染したHSVは何らかの刺激によって再活性化され神経を伝って下行し、再び皮膚や粘膜にあらわれ、病変を形成します。
原因のウイルスを完全に死滅させることができないので、症状を抑えることしかできません。
発症にはHSVに初めて感染したときと、すでに潜伏感染していたHSVの再活性化によるときの2種類があります。
一般に、前者は病巣が広範囲で症状が強く、発熱などの症状を伴うことが多いのですが、後者は症状が軽く全身症状を伴うことがありません。
初めて症状があらわれた場合を初発といい、初めて感染した場合には初感染とよんで区別しています。
潜伏期間は5~10日です。
感染したときは無症状であっても、全身的あるいは局所的な免疫能が抑制されたために潜伏していたHSVが再活性化され、症状が初めて出現する場合があり、これを非初感染初発といいます。
また、初発のあとで症状がでることを再発もしくは回帰発症といいます。
性器ヘルペスの6〜7割は再発なので、再発対策が重要になります。
ヘルペスの症状が出ていなかったり、病変が小さくてわからない場合でもウィルスが活性化している時期はパートナーに感染させる危険性があるので注意が必要です。
口唇ヘルペスと性器ヘルペス >性器ヘルペス感染症報告数
平成11年~令和3年の患者数の推移をグラフにしたものです。
男女ともに平成21年から少しずつですが増加傾向にあります。
平成29年~令和3年の男女別の性器ヘルペス報告数をグラフ化したものです。
男性は25歳から39歳までに多く、女性は25歳から29歳が非常に多くなってます。
情報元:厚生労働省> (数値を当方でグラフにしました)無断転載禁止
ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染が原因です。
多くの方が感染しており、唾液中に混ざっていることが多いです。
性行為、オーラルセックスによって感染しますが、感染力がとても強いため、お風呂やトイレ、コップや箸の共用などで感染することもあります。
性器の周辺に、水ぶくれ・ただれができて痛みます。
口唇・太もも・お尻・肛門など性器周辺に発生することも多々あり、避妊具(コンドームなど)でも完全に防ぐことはできないのです。
個人差はありますが感染してから5日から10日後ぐらいで発症します。
その時の体調や疲労具合によっても症状が悪化する場合もあり、初めて感染した場合は症状が強く出やすいとも言われています。
性器ヘルペスの6〜7割は再発によるものなので、再発対策が重要になります。
症状がある場合:皮膚擦過検査
症状がない場合:採血による抗体検査
感染機会から24時間以上経過で検査可能です。
※抗体検査の場合は感染機会から1ヶ月以上経過で可能です。
抗原検査
既に症状が出ている方向け
結果:約15分後
ヘルペス1型か2型かの区別はつきません。
抗体検査(当院では1型、2型を区別して検査できるようになりました。)
症状はないが不安な方
思い当たる行為から1ヵ月以上経っている方
結果:2〜4日後
※結果はWEBで確認できます。
あおぞらクリニックでは、検査や治療を受けられる場合、問診料や再診料は頂いておりません。
患者様のご負担は、検査料金とお薬代のみです。
ヘルペスには1型、2型があり、当院のヘルペス抗体検査では、それぞれ別々に結果がでます。
1型、2型ともに1ヶ月経過で検査可能。3ヶ月以上経過していることが理想的です。
特に1型は6ヶ月以上経過が必要な場合があります。
性器ヘルペスの治療は、基本的に男性と女性で大きな違いはありません。どちらの場合も、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」が治療の中心となります。
(※ヘルペスウイルスを完全に除去する治療法は確立されていないため、症状を抑えることしかできません。)
治療の基本)
内服薬(飲み薬): ヘルペス治療の中心となるのが内服薬です。全身に作用するため、広範囲に症状が出ている場合や、症状が重い場合に効果的です。
初感染: 初めて性器ヘルペスを発症したときは、症状が重くなることが多いため、医師の診断のもと、抗ウイルス薬を5〜10日間程度服用します。
再発: 再発の場合は、症状が出始めた「ムズムズ」「ピリピリ」といった初期症状の段階で、できるだけ早く服用を開始することが重要です。再発時の治療は、通常5日間程度の服用となります。
再発抑制療法: 1年に6回以上など、頻繁に再発を繰り返す場合は、毎日少量の内服薬を服用することで、再発自体を抑える治療法もあります。
外用薬(塗り薬): 患部に直接塗布して、水ぶくれやかゆみなどの症状を緩和させます。内服薬と併用することがありますが、単独での効果は限定的とされています。
点滴: 重症の場合や、内服が難しい場合には、入院して抗ウイルス薬を点滴で投与することもあります。
男性の治療における注意点)
症状が軽度でも、パートナーに感染させるリスクがあるため、性器に異変を感じたら、医療機関を受診しましょう。
治療中は性交渉を控えることが重要です。
女性の治療における注意点)
初感染時の症状は重く、再発を繰り返す可能性があるため、必ず医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。
妊婦が性器ヘルペスに感染している場合(特に症状がある時)、出産時に赤ちゃんに感染するリスクがあるため、特別な治療や管理が必要となります。
共通の注意事項)
早期治療が重要: 抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑えることで効果を発揮するため、症状が出始めたらできるだけ早く服用・塗布を開始することが大切です。
自己判断での市販薬の使用は避ける: 性器ヘルペスに似た症状の病気(梅毒や帯状疱疹など)もあるため、自己判断で市販薬を使用せず、必ず医療機関を受診して正確な診断を受けましょう。
パートナーも一緒に: 性行為によって感染することが多いため、パートナーも症状がないか確認し、必要であれば同時に治療を行うことが重要です。
再発をコントロールする: ヘルペスは再発しやすい病気ですが、日頃から免疫力を高めること(十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレスを溜めないこと)で、再発を抑えることができます。
ヘルペスの感染予防にはコンドームを使用するのが効果的です。
ただしコンドームを使用することで100%感染を防げるというものではありませんので、ご注意下さい。
また、性器ヘルペスに対するワクチンもありません。 ヘルペスは現代の医学で完治する病気ではありませんので、もし感染した場合には再発の予防が重要となります。
睡眠不足、疲れやストレス、栄養不足が原因で再発しやすくなりますので、日頃の体調管理が重要となります。
ヘルペスと帯状疱疹は、どちらも「ヘルペスウイルス科」のウイルスが原因で起こる病気ですが、その原因となるウイルス、症状の現れ方、重症度、再発の頻度、後遺症などに大きな違いがあります。
1. 原因となるウイルスの違い
ヘルペス(単純疱疹): 単純ヘルペスウイルス(HSV,Herpes simplex virus)が原因です。元来、主に唇にできる「口唇ヘルペス」の原因となるHSV-1型と、性器にできる「性器ヘルペス」の原因となるHSV-2型があります。
(但し、現代ではオーラルセックスにより、HSV-1型が性器から、HSV-2型が口唇から検出されることも多くあります。)
帯状疱疹: 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV, varicella-zoster virus)が原因です。
このウイルスは、子供の頃に「水ぼうそう(水痘)」を引き起こすウイルスと同じものです。
2. 発症の経緯と症状の現れ方の違い
ヘルペス(単純疱疹): 感染者の唾液や体液、皮膚の接触によって感染します。ウイルスは体の神経節に潜伏し、風邪や疲労、ストレスなどで免疫力が低下したときに再活性化して症状が現れます。唇や性器など、特定の限られた部位に小さな水ぶくれができます。
帯状疱疹: 子供の頃に水ぼうそうにかかった後、ウイルスが神経節に潜伏したまま何十年も休眠状態にあります。加齢や病気などで免疫力が低下したときに再活性化し、体の片側の神経に沿って、帯状に赤い発疹や水ぶくれが現れるのが特徴です。
一般的には体の左右どちらか一方にのみ症状が出ます。
3. 再発と後遺症の違い
ヘルペス(単純疱疹): 再発を繰り返しやすい病気です。特に口唇ヘルペスは、年に数回再発する人もいます。しかし、再発しても症状は比較的軽く、治療が適切に行われれば後遺症が残ることはほとんどありません。
帯状疱疹: 通常、一生に一度しか発症しないと考えられています(再発する可能性はごくわずかです)。しかし、症状が治った後も、発疹があった部分に強い痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」という後遺症が残ることがあります。
この神経痛は、数ヶ月から数年続くこともあり、日常生活に大きな影響を与えることがありますので、発症して72時間以内の治療が必要です。
4. 感染力と予防の違い
ヘルペス(単純疱疹): 接触感染が主です。水ぶくれの中にウイルスが多量に存在するため、患部に触れた手で他者を触ったりすることで感染が広がります。
帯状疱疹: 帯状疱疹の患部から他の人に帯状疱疹として感染することはありません。
しかし、水ぼうそうにかかったことがない人(特に乳幼児)が帯状疱疹の患者と接触すると、水ぼうそうとして感染することがあります。予防には、50歳以上を対象としたワクチンがあります。
項目 | ヘルペス(単純疱疹) | 帯状疱疹 |
---|---|---|
原因ウイルス | 単純ヘルペスウイルス(HSV) | 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV) |
症状の部位 | 口唇や性器など、限られた部位 | 体の片側の神経に沿って帯状に広がる |
痛み | 痛みやかゆみ、ヒリヒリ感 | 発疹に先行して強い痛みを伴うことが多い |
再発 | 再発しやすい | 通常は一生に一度(再発はまれ) |
後遺症 | ほとんど残らない | 帯状疱疹後神経痛が残ることがある |
感染の経緯 | 初めての感染、潜伏ウイルスの再活性化 | 水ぼうそうの経験者のみが発症 |
予防 | ワクチンはない | ワクチンがある(50歳以上対象) |
東京都港区新橋2丁目16−1
ニュー新橋ビル3階 330(男性) 339(女性)