性感染症の常識・非常識、その2


◆性感染症はちょっと独特なところがある
性感染症(STI:Sexually transmitted infection)は、ほかの感染症と比べてちょっと独特なところがあります。敵をきちんと知らなければ、防御はできません。
ここでは、敵の情報(性感染症の非常識ポイント)13個 説明していきます。

☆性感染症の常識・非常識13か条

◆1.無症状が多いのにうつる!
◆2.何度でも感染するものが多い!
◆3.長期間、無症状のまま体に潜伏する可能性がある!
◆4.同時多発テロ 性器だけではない
◆5.同じ菌なら、性器ものども直腸も、使用する抗生剤は同じ
◆6.複数の病原体が同時に感染していることも多い
◆7.カップル間で違う結果になることも多い
◆8.合併症・後遺症にも注意!
◆9.抗生剤治療の副作用 女性のカンジダ腟炎
◆10.耐性菌が増えている! 〜マイコプラズマ問題
◆11.除菌成功したかの確認検査はすぐできない
◆12.以上の結果、幅広い検査が有効、治療後の確認検査が重要
◆13.性感染症は母子感染するものが多い!夫婦で知識を共有を!


◆1.無症状が多いのにうつる!

有名な性器クラミジアでも、女性(子宮頸管炎)の75%以上が無症状、男性(尿道炎)では50%以上が無症状といわれます。のど感染にいたっては男女ともあまり症状が出ないとされています。

※無症状でも感染することの厄介さは新型コロナでも問題となりました。

性感染症は全体的に無症状なものが多い
しかし、無症状なのにうつる!
⇨気づかない間にだれかから感染して、気づかない間にほかのひとに感染させてしまう。
それが性感染症のこわさ。しかも、無症状でも後遺症がありえる。
⇨つまり、症状がなくても除菌の必要性が高い。
⇨そのため、幅広く検査することが必要(検査目的が定期検診的に)

◆2.何度でも感染するものが多い! 〜やつらは免疫からエスケープする!

淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス、梅毒、HPVなど
一度しか感染しないならピンポン感染は起きない !

ほかの感染症では、免疫ができると再感染しにくくなります。
ところが、性感染症の病原体は、免疫から逃れる仕組み(エスケープ機構)をもつものが多いので、再感染がしばしば起こるのです。
つまり、免疫のブラックリスト(免疫記憶)に記録されにくいのです。
いわば、忍者やスパイのような、潜入のプロといっていいでしょう。

【1か条と2か条を合わせるとピンポン感染の説明ができます】
☆ピンポン感染の仕組み
 無症状でもうつり、しかも何度でも感染するので⇨パートナーとの間で、まるで、ピンポンのラリーのように何度もうつしあってしまう
☆治療中に性行為がありピンポン感染が起こると、治療後にも再度陽性となり、まるで、抗菌薬が効かなかったように見えることがあります。細菌の薬剤耐性化と見分けがつきませんので、医者を悩ませます。

☆免疫を回避する=「戦闘(炎症)が起きづらい」からこそ、無症状も多くなると言えるでしょう。

【注意:ヘルペスの再発再感染とは違う】
ヘルペスウイルスは、感染すると一生体の中に潜伏します。
感染したヘルペスウイルスは、ふだん神経の細胞の中に隠れていますが、睡眠不足などで人間の免疫が低下すると、皮膚表面に出てきて炎症を起こし、水疱(水ぶくれ)や潰瘍(かいよう)を作ります。これを再発と呼びます。(ふだんは、神経の細胞内に潜むことで免疫から逃れています)
再感染とは、前に感染したものが治癒して、同じ種類の病原体に新たに感染することを言います。
※1型ヘルペスと2型ヘルペスは別のウイルスなので、1型に感染していても新たに2型に感染することはありえます。

1,2か条のまとめ
無症状でも相手に感染したり、何度でも感染する


◆3.長期間、無症状のまま体に潜伏する可能性がある!:年単位のことも
淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、梅毒、トリコモナス、ヘルペス、HIV 、B、C型肝炎ウイルス

⇨検査では、「いつ感染したか」はわからない
検査で陽性でも直近の行為で感染したとは限らない!
感染の時期は、直近の性行為でかもしれないし、数年前の性行為でかもしれない
(むしろ、直近の相手にうつしている側かもしれない)
検査でわかることは「検査した時点で感染しているかどうか」のみ

誰から、いつ、感染したかは検査ではわかりません

性行為(キスやオーラルセックスだけも含む)の経験人数が、生涯で1人でもなければ、断定することはなかなか難しいのです。

【ちょっと強引な机上の論理ですが、クラミジアで考えてみましょう】
たとえば、女性の性器で発症した場合。
まず、一番に考えるのは、「男性尿道感染(無症状)⇨女性器」でしょう。
しかし、男性器女性の咽頭は、両方向とも感染確率が高いルートです。
そうなると、以下のルートも考えられるのではないでしょうか(何回かの性行為がある場合)。
「女性咽頭(無症状)⇨男性尿道(無症状)⇨女性器で発症」
つまり、発症までにもピンポン感染はありえるので、どちらが先かを考えても意味がないことも多いのです。


さて、性感染症の常識・非常識 その2でした。
無症状が多いゆえの問題を少し書いて締めたいと思います。

コラム:感染リスクと時代背景 「自分は大丈夫」と考えて大丈夫?
不特定多数のひととの性行為があれば、感染リスクは当然高くなります。
しかし、特定のパートナーのみでもリスクはないわけではありません。
まず、相手の性的活動に保証はありません。
それに、パートナーも自分もお互いとしか性行為をしていない場合でも、パートナーの元カレの元カノの元カレ、のようにたどっていったとき、みんな無症状でも、誰かがなにかに感染していたかもしれないのです。
そして、これは自分の側にもあてはまります。
この辺りのわかりにくさを解説したのが1〜3か条なのです。


SNS時代、性感染症にも情報で対抗を
時代の流れ的に、出会い方がSNSやアプリであることが多くなっているようです。
いまのパートナーと出会う前に、数回だけのお相手もいるでしょう。
たとえ、一回だけの相手でも、お互い連絡はできるようにしておいたほうがいいことがあります。
無症状が多い性感染症は、陽性になったときにお互い連絡しあうくらいしない限り、なかなか感染に気づけません。
最近は、セックスワーカーの方からも「定期検査で陽性になった」という連絡が常連客に来ることもあるようです。

このようなインターネット時代ならではの、情報による集団的防御は非常に有効かもしれないです。
自分が陽性になったら、連絡できる人には連絡するのが好ましいでしょう。
それが回り回っていつか自分を助けてくれるかもしれません。
いざ、いいひとと出会って付き合い出したときに、性感染症を発症させてしまうことがないようにしたいですね。

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