自律神経失調!?性機能の仕組みから見る心因性ED


「ストレスがかかると自律神経が乱れて体調が崩れる」という話をよく聞くと思いますが、実は男性性機能(勃起と射精)も自律神経によってコントロールされています。

つまり、心理的なストレスなどが自律神経に影響しEDを引き起こす可能性があるということです。 これを心因性ED(心理的なことが原因のED)といいます。

もちろん、EDの原因は心因性だけではありません。加齢やメタボリックシンドロームなども大きな原因となります。 しかし、今回はまず心因性EDを紹介します。

ここで心因性を取り上げる理由は、自律神経によるコントロールの仕組みがわかると性機能が理解しやすくなるからです。 また、心因性EDは全年齢で起こりえます。

はたらく自律神経

自律神経について詳しくはリンク①を参考にしてください。
自律神経は「闘争と逃走の際に頑張る交感神経」と「休養中に働く副交感神経」のふたつの神経からなっています。

自律神経のわかりやすい機能:ひとつの器官を綱引きのように交感神経と副交感神経がコントロールする場合です。
アクセル役の交感神経とブレーキ役の副交感神経によるシーソーとイメージしてください。

たとえば、心臓は活動しないといけないときには交感神経が活発になり脈を速くし、リラックスしているときには副交感神経が脈をゆっくりさせます。 このように、生命維持にかかわる仕組みを自動で(意識しなくても)つつがなく行ってくれるのが自律神経のわかりやすい機能です。

副交感神経にメインで支配されている機能

※神経にまつわる用語:神経が働くことを「興奮」といいますが、精神的な興奮、緊張とは異なります。 また、ある臓器をコントロールしていることを「支配」といいます。 わかりやすい綱引き関係ではない機能もあります。

ざっくり説明してしまうと、副交感神経は「戦うときに必要のない機能」をコントロールする主役でもあります。

消化や排泄、そして勃起がそうで、これらは戦っているときには働かせたくない機能です。(エネルギーの無駄ですよね) これらの機能は、からだがリラックスしているときにこそ動かしたいのです。 つまり、副交感神経がよく働くのには次の条件が必要ということです。

ポイント:「リラックスができないと副交感神経の機能はうまく作動しない」

このイメージがないと勃起機能は理解しづらいかもしれません。
※性的な興奮で勃起するのに、リラックスの副交感神経が支配しているなんて、なんとなく違和感がありますよね。

性機能と自律神経

勃起はリラックスの神経である副交感神経によって支配されています。
なので、リラックスできないと十分な勃起状態を保てません。(焦れば焦るほどうまくいきません)

射精は性的な興奮が最大になると、副交感神経優勢から交感神経優勢に切り替わり射精が起こります。
(正確にはスイッチのように切り替わるわけではないのですが、わかりやすさ優先の表現にしています)

中折れ:射精に到達する前に交感神経に切り替わると萎えてしまいます。(男性不妊の原因となります)

早漏:射精できても、切り替わりが早すぎると早漏という射精障害になります。

自律神経と男性性機能の大雑把な関係


図のように、緊張、不安、焦り、プレッシャーなどが強いと交感神経が興奮してしまい勃起を維持できなくなります。


◇悪循環の形成:予期不安

一度勃起が維持できなかった経験をすると、「またなるかもしれない」という予期不安に襲われやすくなります。 焦れば焦るほど交感神経に切り替わりやすくなり、悪循環が形成されてしまうのです。


◇妊活のプレッシャー

妊活も排卵日だけに合わせて性行為を行っていると、そのプレッシャーで心因性EDになることも多いので要注意です。

恋のときめきがなくても充実した性生活を送るために

人間も性に関わるホルモンの作用の影響は大きいので参考になると思います。恋や愛、性欲にもホルモンは関与しています。

・参考記事:SEXと関わる4大ホルモン
・参考記事:なぜ恋の病は痛いのか

恋のドキドキがなくても

現代では結婚の前からの性行為が当たり前ですし、結婚後すぐ子供を作らないことも多いです。つまり、いざ子供を作るときにはすでに「恋のドキドキ感」は助けてくれないことが多いと思われます。

場合によっては、忙しくてふだん触れ合うこともなくなり性行為のハードルが高くなってしまってることもあるでしょう。そうなると、自然に性行為を始めるきっかけがつかめなくなっていることも多そうです。
セックスレスは多様で難しい問題ですのであまり触れませんが、以下の記事も参考になりそうです。

参考記事: “幸せホルモン”セロトニンで心も身体もスッキリ目覚める!

幸せホルモンと愛着ホルモン

ひとは触れ合うと幸せホルモンのセロトニン、愛着ホルモンのオキシトシンなどが分泌されます。
ドキドキ感が介在しなくなったパートナーとの性行為には、このふたつのホルモンがキーになると思います。

心因性EDにも触れ合いを

心因性EDの観点からみると、「無理に行為をせず、頻繁に触れ合っているうちにお互いしたくなったときだけする(※)」、というのが理想でしょう。
※手をつなぐ、ソファにくっついて座る、マッサージしあう、同じふとんで眠る、一緒に入浴、などなど

もちろん、ED薬は効果が高いので、ほかに原因がなければ十分子供を作る目的は解決できるとは思います。 ただ、もしこの機会にセックスレスも解消したいと考えておられる方は参考にしてみてください。

まとめますと、大事なのは「ふだんから触れ合うこと」なのでしょう。 そうでないと、スムーズに性行為に移行しづらい、ですよね。

萎えたときは仕切り直しも大事

さて、途中で萎えてしまったときは、すでに交感神経に切り替わってしまっていることが多いのでいったん休憩するのがベターです。 焦って無理に刺激しても、もはや射精(交感神経)に傾いてしまっているため、十分な勃起を経ずに射精に至るだけかもしれないからです。

ちなみに休憩時には排尿するといいでしょう。排尿も副交感神経に切り替えないとできないからです。

参考:勃起すると排尿しづらくなる理由

精子の通路は前立腺の中で尿の通路である尿道に合流しています。

膀胱を出てすぐの前立腺の中で合流して尿道へと続いているため、勃起以降の過程で混線しないように、尿道の出口(内尿道口)は交感神経によって閉められます。これにより精液が膀胱に逆流するのを防ぎます。


心因性EDに対してED内服治療薬(以下ED薬)がしてくれること

ED薬により「勃起状態をキープしてくれる安心感」を得つつ、「成功体験を重ねる」ことで、心因性EDで形成される悪循環も断つことができると考えています。

ちなみに、気づかれた方もおられると思いますが、心因性EDだけでなく早漏も同じ原因で起こることが多いです。
いまでは早漏の原因は以前言われていたような性的な経験不足ではなく、ストレスや不安といわれています。EDの改善と同時に早漏も改善する人もいらっしゃるようです。
※ただし、ED薬の効能に早漏はありません。

私見ですが、心因性EDの3パターン

実は心因性EDについては「ED治療ガイドライン3版」でもあまり詳しく書かれていません。
リスクのひとつと考えられている心理的ストレスについてはまだ研究不足とのことで、3版への追加は見送られたようです。

出典:ED診療ガイドライン ここからは臨床経験からの私見ですが、心因性EDにもいくつかパターンがあるので見ていきましょう。

1.一時的な心因性ED

例えば、はじめての性行為で緊張してしまい、勃起が不十分になってしまったというのがわかりやすい例でしょう。
それを引きずってしまってそれ以後たまに心因性EDになってしまう場合はやはりED薬のよい適応です。

また、アルコールを飲みすぎてしまったときなどにうまくいかなかった経験があると、その後も「またなったらどうしよう」という心配(予期不安)が強くなり、EDを繰り返すようになってしまうパターンもあります。

このような一時的なものはED薬などで成功体験を何回か重ねることで治ってしまう可能性も高いです。
※ただし、最初の発症が動脈硬化などのほかの原因によるEDの場合は、ED薬を飲み続ける必要があることが多いと思われます。

2.こじらせた心因性ED

失敗体験を続けてしまうと、こじらせて毎回のようにED症状を繰り返し、長引いてしまうこともあるようです。 性行為を避けるようになってしまうことも多いため、失敗体験をあまり重ねないうちに、早目に成功体験を重ねて克服したいところです。


3.自律神経失調症(交感神経優位)のようなタイプ

生まれつき性機能が弱いのではないかと自信がなくなっている方や、早漏も同時に悩んできた方などはこのパターンかも知れません。

このパターンの可能性がある参考例
・朝立ちの硬さを100%とすると、性行為中に100%の勃起になることがいままでなかった
・ED薬を使って初めて性行為中に100%の勃起を経験した場合
・若い頃は男性ホルモンが多いおかげで性行為はなんとか大丈夫だったが、早漏で悩んでいた

※朝立ちは心因性EDではなくなりません。基礎疾患がある器質性EDの場合、朝立ちにも異常が見られます。
(ちなみに、個人的な推測ですが、ED薬によって朝立ちの硬さが期待できるのではないかと考えています)
※ただし、睡眠に問題のある方では朝立ちがわかりにくいこともあるので注意が必要です。自律神経失調症では睡眠障害も多いです。

参考記事:「朝立ち」の科学


人間には交感神経優位の人と副交感神経優位の人がいるといわれています。交感神経優位の人は緊張しやすいため疲れやすく、筋肉も緊張していることが多いです。よって、肩も凝りやすく筋緊張型頭痛にもなりやすく睡眠も浅い傾向あり。また、横隔膜も緊張し呼吸も浅くなりがちで脈も速い傾向もあります。 いわゆる自律神経失調症に悩んでいるタイプです。性機能の仕組みを考えれば、交感神経優位のひとはEDや早漏を発症しやすいと思われます。

コラム in コラム:漢方ではEDを陰萎と呼ぶ

陰萎に使われる薬はいくつかありますが、ここでは桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)という薬を紹介します。

出典:漢方頻用処方解説 柴胡加竜骨牡蛎湯②


(リンクは柴胡加竜骨牡蛎湯を解説したものですが、2ページ目の真ん中は桂枝加竜骨牡蛎湯の説明になっています)
この薬の適応になる状態は、神経過敏による冷え、つまり「交感神経が緊張し末梢の血管が収縮することで顔色不良や末端が冷えている(末端冷え症)状態」といってよさそうです。
具体的には不安、不眠、顔色不良、亀頭が冷たくなって陰萎になっているもの、夢精などの症状がある場合に使われます。


結び

自律神経をキーワードにして性機能、そして心因性EDの起こる仕組みを紹介してきました。
たしかに、交感神経優位の人は自律神経失調症になりやすいのですが、どちらがいいとかではありませんので心配しすぎないでください。 (心配し過ぎも交感神経を刺激してしまいます)
逆に副交感神経優位ではメタボリックシンドロームになりやすいかもしれないので、メタボからEDを発症する可能性もあるのです。 なにより自律神経系というのは中庸が肝要で、どちらかに傾きすぎないことがとても重要です。


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