ED内服治療薬のススメ

勃起障害の内服薬の登場

1999年、国内ではじめて勃起障害内服治療薬(以後ED薬)が認可され、2008年にEDの治療ガイドラインが作成されました。
効果の高いED薬であるPDE5阻害薬の登場によりED治療の分野が一気に活性化したのです。

参考文献:>ED診療ガイドライン【第三版】

※多くの病気には各学会などの作られたガイドラインがあります。日本における標準的治療を根拠を示しながらまとめられています。

まめ知識的なことですが、ED治療薬は元々別の病気の治療薬として開発されました。

結局、治験で有効性が出せず治験も中止となり薬の回収となりました。
ところが、被験者の方たちが薬を返したがらないのです。理由を聞くとなんと副作用で勃起障害が改善したとのことでした。

そして、改めてその方向で開発が進み、ついにED内服治療薬として世に出たのです。
副作用としてたまたま別の効果を認められた薬が特定の分野を活性化することはたまにあります。
(科学全般でいうと偶然による発見というのは多く語り継がれています)
たとえばAGAも、たまたま副作用として効果のある薬が見つかったことで、病名までもがここまで世に知られるようになりました。



勃起障害の年齢別割合

EDは年齢とともに増えていくことがわかっていますが、若い方でも勃起障害(ED)はけして少なくありません。

日本人の性についての調査があります。

情報元:>JEX JAPAN SEX SURVEY

この調査によると、「勃起できない、しづらい」ひとは、20代、30代は9%前後、40代は16.8%、50代は20%以上、60代は30%以上となっています。

処方には医師の診察が必要

ドラッグストアなどで置くことが許可されている一部の薬を除き、医師の診察なしでは処方できません。

たしかに、ED相談でクリニックなどを受診することはハードルが高いです。初めて受診するときが一番勇気が必要だと思います。
しかし、その初回の勇気を裏切らない効果が得られる可能性が高い薬でもあります。

効果も安全性も高い薬なのです。安全性や副作用についても別の回で説明していきます。
また、先のデータによれば、若い人でも10人に1人くらい、中年以降では2人くらいがEDを自覚されているのです。
クリニックにも1日にかなりの数の方がED薬を求めて来院されます。

なので、けして恥ずかしがる必要はありませんし、むしろ早く飲み始めないと損な薬だと思っています(別の回で説明しています)

ところで、ED薬がまだ日本で認可されてない頃、ある事故が起きました。
ED薬に対する抵抗感が高くなってしまった原因のひとつでしょう


日本で認可される前についてしまったイメージ

覚えている方もいらっしゃるかと思いますが、日本でまだED薬が認可されていなかった頃、この薬で死亡事故があり大きく報道されました。

その結果、危険なイメージがついてしまい、「危険な薬」とか「心臓に悪い薬」というレッテルを貼られてしまったのです。

その事故ですが、一緒に使用してはいけない薬(併用禁忌)であるニトログリセリンを使用している人で起きてしまいました。

日本にまだなかったので、ED薬を個人輸入で手に入れて内服したため、併用禁忌であることを知らなかったのではないかと言われています。
これは使用法のミスであり、どんな薬も間違った方法で使用すれば危険なのです。

 
体力とのかねあいの判断は必要

副作用の回で改めて説明しますが、体力の落ちている方では性行為の運動量に体が耐えられるかどうかの判断が必要となります。
もちろん、人によって薬の効果は違うのですが。
効果が強い場合、人によっては一度の性行為において複数回かの勃起が可能になったり、遅漏ぎみになったりすることもあるようですので、想定以上の消耗もありえます。

駅の階段で息が切れるようだと、体力作りも頑張っていただく必要があります。
性行為中の死亡の原因は、ED薬の副作用ではなく、運動量の増加に体が耐えられないせいといわれています。

EDのリスクはそっくり心血管疾患のリスクと同じ

実はEDのリスクである加齢,喫煙,高血圧,糖尿病,肥満・運動不足,うつ,慢性腎臓病,睡眠時無呼吸症候群などはそのまま心血管疾患のリスクでもあります。

それどころか、最近ではEDは心血管疾患のサインとすらいわれています。
EDの原因の項で、メタボとEDの関係やED薬がアンチエイジング薬として注目されていることなども今後説明します。

性だけにととどまらず人生にもよい影響を

また、性機能の改善は人生における自信の回復など、心理的な影響も大きいことが知られています。
性に限らず、Quality of Life (人生の質)が向上する助けになるかもしれません。

諸外国ではED薬の登場・普及により、中年以降の性活動が活発になったという報告もあります。
信頼関係はできているものの性生活だけに不満のあったカップルには、ED薬が福音となるのでしょう。

もちろん、性行為をしないのも自由です。
でも、それを重視する価値観のひとたちにとって性はとても重要な問題です。

ED治療と同時に正しい性の知識もアップデート

ところで、もしも、パートナーが性行為に苦痛を感じることがある場合、ED薬を使ったらどうなるでしょうか。
もちろん効果の大きさはひとによって異なりますが、ドーピングレベルの効果が出てしまう男性もいるようです。
場合によってはパートナーの負担や苦痛が一気に増えて関係が壊れるかもしれません。

性行為の際、パートナーの痛みなどが強い場合もあるでしょう。
できれば、男性がED薬を開始する際に事前の話し合いがあったほうがよさそうです。
なかなか難しいのは承知しているのですが。

そして、最近は時代も変わり女性の書いた性に関する書籍などもたくさんあります。
パートナーの負担を減らす参考にしてみてはどうでしょう。

パートナーを喜ばせたくてED治療をしたのに、そのせいで相手に苦痛を与えてしまったら本末転倒ですよね。
ED薬は諸刃の剣になりうることも頭の隅に置いていただけたら幸いです。

結び

最後に、治療の視点から。

実は、心理的な原因で起きる心因性EDは特に、パートナーと相談しながらのほうがはるかに治療の効率がいいのです。
話してしまうだけでかなりの心理的プレッシャーを減らせます。

また、ED薬の内服を途中でやめた理由で多いのは、服用のタイミングなどのわずらわしさだそうです。
パートナーに隠れて1時間前くらいに飲んだり、デートで食事やアルコールの影響を気にしないといけなかったり、こっそり内服するのはかなり疲れます。

ちなみに、効果が出なかった人に食事の影響などを改めて説明するとかなりの人は効果を感じられたというデータもあります。
それだけ正しく飲むことが難しいということなのでしょう。

もっとも、少し値段が高くなりますが、食事の影響を考えなくていい長時間タイプのものもありますので、気軽にご相談ください。
用途に合わせていくつかのタイプを使い分けるのもおすすめされています。



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