「偽装の達人」といわれる梅毒、 どういうときに疑う?


Syphilis(シフィリス):梅毒(病名)

Treponema pallidum :梅毒トレポネーマ (原因となる細菌の名前)


私が梅毒の名前を知ったのは、まんが「動物のお医者さん」だったように思います。 北大獣医学部を舞台にした話で、ハスキー犬のブームを起こしたことをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。 性病である梅毒の名前は、他の科の学生もいる場所では声に出して言いづらいということで、「パリダちゃん」という隠語で呼ばれているというエピソードでした。

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が梅毒の学名です。
梅毒は「〇〇菌」のように呼ばれることが少ないのでわかりにくいですが、細菌です。 ウイルスではなく、抗生剤で殺せる細菌です。

さて、今回は、梅毒に感染したのではないかと不安になっている方の参考になるような内容を目指しています。

目次

実は梅毒は「偽装の達人(the great imitator)」の異名を持つほど症状が多彩でまぎらわしく、ほかの疾患との区別が意外と難しい病気なのです。 受診の際の参考になるように、まずは検査をすすめる状況や症状などを紹介します。

梅毒の検査をすすめる場合


以下の項目に1つでも当てはまったら梅毒の検査をすすめます。

□感染リスク・心当たりがある(無症状、未発症でも)
=不特定の人との性行為(キスやオーラルセックスだけも含む)がある(または、あった)

□3ヶ月以内に性行為(キスだけ、オーラルセックスだけも含む)のあった相手が「梅毒になった」、あるいは「検査で梅毒陽性」

□不特定多数の相手との性行為がある方

□パートナーは1人でも、付き合い出したばかり(1〜3ヶ月目くらい)のタイミング。

□クラミジアなどのほかの感染症に感染した

【症状編】よくある症状です。

□性器や口唇に軟骨のような硬さのしこりがある(または、あった)
 =梅毒の初期硬結(しょきこうけつ)を疑う所見

□性器や口唇に硬いクレーター状、あるいは平坦にみえるが厚みのある潰瘍(かいよう)がある(または、あった)
 =梅毒の硬性下疳(こうせいげかん)を疑う所見

□皮膚に発疹が現れた(いまはなくなっていても)

□掌や足の裏に発疹

□鼠径リンパ節(そけいりんぱせつ:脚の付け根のリンパ節)に空豆大くらいのしこりができた
 =鼠径リンパ節の腫脹(しゅちょう)(痛みはないことが多いが、あることも)

□のどが痛い

□上記のような症状があったが、他の病気で処方された抗生剤を飲んだらよくなったので、もう大丈夫かなと思っている方

 

【解説】

3ヶ月以内に性行為(キスだけ、オーラルセックスだけも含む)のあった相手が「梅毒になった」、あるいは「検査で梅毒陽性」
→梅毒は、感染力が非常に強いことと感染しても症状が出ないことがあるため、検査をお勧めしています。
※逆にご自分が梅毒陽性の際には、3ヶ月以内に性行為のあった方には感染させている可能性がありますので相手の方に連絡していただくのが望ましいと思います。

不特定多数の相手との性行為がある方
→数ヶ月に一度くらい、梅毒とHIVの定期検診を勧めています。

パートナーは1人でも、付き合い出したばかり(1〜3ヶ月目くらい)のタイミング
→性感染症は意外と無症状のものも多いです。そのため、気づかずに感染させてしまうのです。
淋菌やクラミジアなどもそうですが、梅毒も無症状のパートナーからもらってしまうこと(または、うつしてしまうこと)もあるのです。
付き合い出した直後に2人で一緒に検査を受けるカップルもいらっしゃいます。


クラミジアなどのほかの感染症に感染した
→性感染症は複数同時に感染することも多いのが特徴です。 ほかの性感染症の治療をする際には調べておくことをおすすめします。

【症状編】よくある症状です。
※梅毒の症状は「痛くない、かゆくない」ことが多いといわれますが、個人差は大きいです。

性器や口唇に軟骨のような硬さのしこりがある(または、あった)
 =梅毒の初期硬結(しょきこうけつ)を疑う所見

性器や口唇に硬いクレーター状、あるいは平坦にみえるが厚みのある潰瘍(かいよう)がある(または、あった)
 =梅毒の硬性下疳(こうせいげかん)を疑う所見

情報元:Acta Dermato-Venereologica>

※潰瘍:口内炎のように皮膚、粘膜がえぐれたような病変。
梅毒ではヘルペスと違い痛みが強くないことが多いですが、「擦れると痛い」など痛みのある方もいます。(痛みには個人差がありますので、痛みの有無だけでは判断できません。)この潰瘍には梅毒の菌がたくさんいます。

皮膚に発疹が現れた(いまはなくなっていても)
 =梅毒のバラ疹(ばらしん)、梅毒性丘疹など
平らで赤〜褐色もの(バラ疹)、少し盛り上がっているもの(丘疹)、にきびのように膿をもつもの(膿疱)、かさかさした平たい盛り上がり(乾癬)など、様々なパターンがあります。全身でなく体の一部ということも多いです。

バラ疹が出て消えた後に丘疹が出現することが多いです。 全身性の発疹の場合、性感染症ではとくに梅毒とHIVの検査を勧めます。

情報元:Future Medicine>


掌や足の裏に発疹
全身に発疹が出る疾患で、掌や足の裏にも発疹の出る病気は意外と少ないので有力な所見ですが、掌や足底に発疹が出ないことも多いです。
例:梅毒、サル痘、掌蹠膿疱症、手足口病(2022年8月にも流行、成人も発症する)など

情報元:PBD>


鼠径リンパ節(そけいりんぱせつ:脚の付け根のリンパ節)に空豆大くらいのしこりができた
 =鼠径リンパ節の腫脹(しゅちょう)(痛みはないことが多いが、あることも)
図:鼠径リンパ節 

※リンパ節の所見は参考程度で考えてください。
例えば、硬性下疳などのほかの症状があって、さらに、鼠径部にかなり大きくリンパ節を触れる際には梅毒の疑いが強くなります。

のどが痛い
性感染症の中でのどに炎症を起こしうる代表は淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、HIV感染初期症状(かぜと区別困難)、ヘルペス初感染、そして梅毒第2期です。

上記のような症状があったが、他の病気で処方された抗生剤を飲んだらよくなったので、もう大丈夫かなと思っている方
→梅毒の抗生剤内服は4週間が標準的なので、1週間分の抗生剤では除菌しきれていない可能性が高いです。

早期発見が重要

前述の当てはまった場合に検査をお勧めする項目に「1つでも」というと、性感染症の相談で受診される方のほとんどが当てはまってしまいます。
「そんなに調べる必要があるの?」と疑問に思われると思いますが、梅毒は感染力が強い(1度の性行為で感染する確率は30%以上といわれます)上に、現在大流行していますので、症状がなくても感染リスクがあるならば検査しておくことをおすすめしています。
また、ペニシリン系抗生剤を使えば治る可能性が高いのですから、早く見つければメリットの方が大きいです。
しかも、免疫が不完全にしかできず何度も感染する人も多いため、過去に治療したことがあってもリスクがあったら調べておくにこしたことはありません。

参考:梅毒で免疫は形成されるか?【完全な防御抗体(免疫)はできないと推測される】>


また、不特定の方との性行為がある方に、梅毒とともに定期的な検査をおすすめするHIVは梅毒と反対の特徴を持っています。

感染力

予後

梅毒 感染しやすい 抗生剤で治る
HIV 感染しにくい 抗HIV薬を飲み続けないといけない

昔は不治の病であったエイズも、今では抗HIV薬療法が進歩したおかげで死亡率の高い病ではなくなりました。
しっかり内服を継続しHIVの増殖を抑えてウイルス量をコントロールできれば、日常生活を保ちつつ(ウイルスの量を少なく保てれば、感染を気にせず性行為も可能)寿命を全うできる慢性疾患になったのです。 こちらも早期発見が非常に重要です。

参考:HIV検査相談マップ>

ポイント:
感染しやすいが治りやすい梅毒。
感染しにくいが感染したら服薬しつづけなければいけないHIV。
感染リスクのある方はどちらも定期的に検査し早期発見を。


まとめ
新型コロナの流行下にひそかに影響を受けているのが、保健所の性感染症検査です。 コロナ対応で保健所が忙殺され、性感染症の枠が減ってしまい、検査を受けられないでいる方が増えているのではないかと心配されています。
一方で梅毒は今年も届け出数はどんどん増加しており、9月4日までのデータで、統計を取り出してから日本で最多となった去年の数を超えてしまいました。
感染防御が難しく、しかも診断も意外と難しい梅毒。少しでもリスキーな性行為があったら検査をおすすめいたします。

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