HIVの治療

HIVの治療は、血液中の免疫力を示す数値(CD4)をみながら、抗HIV薬を処方しておこないます。

HIV感染症治療の原則として

①血中ウイルス量を検出限界以下に抑え続けることを目標にする

②3剤以上からなる薬剤を用いて開始する

③免疫能の指標がいくつか改善しても治療を中止しない

抗HIV治療薬

2018年3月の時点で、日本には24種類の抗HIV治療薬があります。通常、これらの薬を3~4種類組み合わせて併用する抗レトロウイスル療法(ART)が治療の基準となっています。

抗HIV薬の中でHIVを抑制する効果がより強力な薬剤を「キードラッグ」、キードラッグを補足しウイルス抑制効果を高める役割をもつ薬剤を「バックボーン」と呼びますが、それぞれの分類に関して明確な定義はありません。

現在は、バックボーンをヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTA)2剤とし、キードラッグを1剤とする組み合わせが一般的です。今後、新たな作用機序を有する薬剤が開発されたり、既存薬剤の新たな組み合わせの効果が認められたりすれば、このような分類は変化する可能性があります。

抗HIV治療薬には大きく分けて5つの種類があります。

①ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)

逆転写酵素の活性を阻害して、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の宿主細胞への感染を抑える薬です。

この薬剤の副作用として、細胞内にあるミトコンドリアの増殖を抑えることがあります。この薬の副作用として有名な貧血や末梢神経障害、乳酸アシドーシスは、ミトコンドリアの抑制が原因だと考えられています。

※ミトコンドリアとは、動物や植物など多くの真核生物に含まれる細胞小器官のことです。主な役割は、生物が生きていくうえで欠かせない重要なエネルギーを作り出すことにあります。

②非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)

核酸に似た構造を持たない逆転写酵素阻害剤です。ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)と同様に、

活性部位の構造を変えることで逆転写酵素の活性を阻害して、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の宿主細胞への感染を抑える薬です。

この薬剤の副作用として、細胞内にあるミトコンドリアの増殖を抑えることがあります。この薬の副作用として有名な貧血や末梢神経障害、乳酸アシドーシスは、ミトコンドリアの抑制が原因だと考えられています。

※ミトコンドリアとは、動物や植物など多くの真核生物に含まれる細胞小器官のことです。主な役割は、生物が生きていくうえで欠かせない重要なエネルギーを作り出すことにあります。

③プロテアーゼ阻害剤(PI)

機能タンパク質の産生を抑えるためにプロテアーゼという酵素の効果を阻害し、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖を抑える薬です。

プロテアーゼ阻害剤は肝臓や小腸粘膜にある代謝酵素の活性を抑制するため、他の薬剤の血中濃度に大きな影響を及ぼすといわれています。そのため、他の病気で処方された内服薬すべて(健康食品を含む)を把握した上で内服することが重要とされています。

④インテクラーゼ阻害剤(INSTI)

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のDNAは、CD4細胞にあるDNAに入り込むためにインテグラーゼという酵素を必要とします。この薬剤はインテグラーゼの効果を阻害することで、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がDNAに侵入することを防ぐための薬です。

⑤CCR5阻害剤

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、CD4細胞に侵入する時にエンベロープ糖蛋白という物質を使用します。CCR5阻害剤はエンベロープ糖蛋白がCCR5受容体に結合することを阻害して、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染を予防します。2018年3月時点で、日本ではシーエルセントリという薬剤のみが承認されています。

 

引用・参考資料

①抗HIV治療ガイドライン 2018年3月

HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班

研究分担者:鯉渕智彦(東京大学医科学研究所付属病院)

研究代表者:白阪琢磨(国立病院機構大阪医療センター)