梅毒とは

梅毒とは、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)という菌が原因となる感染症です。感染者の血液・体液・精液・感染性のある皮膚病変が、傷ついた皮膚や粘膜と直接接触することで感染する可能性があります。

具体的には、膣性交、アナルセックス(肛門性交)、口を使用した性行為(オーラルセックス)やキスによる接触感染です。トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)は、傷や粘膜に接触することで血液中に侵入し、個人差はありますが数時間の間に全身を回り、脳にまで達するといわれています。

接触感染のほかに、先天性梅毒

接触感染のほかに、先天性梅毒といわれるものがあります。先天性梅毒とは、母体から胎児に梅毒が感染することです。

母親と胎児は出産するまでの間、胎盤とへその緒を通じて血液を介して酸素や栄養を共有しています。梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)は血液に乗って胎児にも感染します。

先天性梅毒であっても、出生時において3人に2人程の割合で無症状であり、身体所見が正常とされます。

先天性梅毒は、症状が現れる時期により早期先天性梅毒と晩期先天性梅毒とに区別されます。

早期先天性梅毒では、出生時から生後3カ月頃に水疱性や斑状性の発疹、丘疹状の皮膚病変が全身に現れます。また、全身性リンパ節腫脹、肝臓や脾臓の腫大、全身の骨や軟骨の炎症などが起こります。

新生児は多くは発育不全に陥り、症状が悪化した場合には髄膜炎、脈絡膜炎、水頭症など発育に著しく支障をきたすような症状が現れることもあります。

晩期先天性梅毒の場合、乳幼児期は症状が出現せずに経過し、生後2年以降に『ハッチンソンの3徴候』(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯)と呼ばれる症状が現れます。

実質性角膜炎は、慢性的に角膜の炎症が起こり、視力障害が生じます。内耳性難聴は、内耳の障害により音の刺激が脳まで到達できず、聴力障害を起こす病気です。ハッチンソン歯は、上顎の前歯が好発部位であり、歯のエナメル質形成不全で、歯の先端の中心が欠けたように見えるのが特徴的です。

また、症状の進行により若年性の神経梅毒を発症することがあります。視神経萎縮により失明することもあります。さらに麻痺が悪化して日常生活に重大な障害が残り、最悪の場合、中枢神経系の障害により死に至る可能性もあるため、梅毒の感染は胎児の人生に重大な影響を与えることになります。

定期妊娠健診の補助制度

現在、日本には定期妊娠健診の補助制度があります。産婦人科で妊娠が確定した後、居住地域の役所に妊娠届を出した時に母子手帳と一緒に補助券が発行されます。補助券とは妊婦健診時の費用の補助を受けるためのチケットです。地方自治体によって補助金額や内容は異なります。

定期妊娠検査は、初回の1回に限り行える感染症検査の項目があります。具体的には梅毒検査、B型肝炎ウイルス検査、C型肝炎ウイルス検査、風疹抗体検査、トキソプラズマ抗体検査、HIV検査、成人T細胞白血病ウイルス検査、クラミジア抗体検査、B群溶血性連鎖球菌検査の9項目です。これらの感染症は全て、流産や早産のリスク増加、胎児の奇形率の上昇など生命予後に直接的な影響を与える感染症のため、検査を受けることが重要です。

妊娠初期において一通りの感染症チェックを行うことで、感染の有無を事前に確認して早期に適切な治療を受けることができます。しかし、梅毒を含む全ての感染症は出産までの間に母体が感染してしまうと胎児も同じく感染してしまうため、不安に思うような性的接触があったり、身体に感染症を疑うような症状が現れた時には、積極的に感染症検査を受けることが大切です。