梅毒の原因菌

梅毒の原因菌は、スピロヘータの一種であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum) です。

梅毒は、感染者の血液・体液・精液・感染性のある皮膚病変が傷ついた皮膚や粘膜と直接接触することで感染します。

 

ここ最近、多くのメディアを通して梅毒感染の拡大が注目を浴びています。

梅毒報告患者数

1948年、当時の梅毒報告患者数は約10万人以上でしたが、同年に性病予防法が施行されて以降、予防対策により年々その数は減少し、1990年代には1000人以下にまで低下しています。

しかし、ここ数年の間に梅毒患者数は劇的に増え、2017年には5770人(全国の発生報告件数)であると厚生労働省が発表しています。統計からわかるのは、感染者の男女差はそれほどなく、特に20代から40代が増加しているという現状です。

梅毒の治療研究

各国で梅毒の治療研究が進められ、国ごとにガイドラインを策定し、それに沿った治療を行っています。我が国では、日本性感染症学会が梅毒治療のガイドラインを策定しています。

日本の医療については、他の先進国と比較して優れていると感じる方が多いと思いますが、こと梅毒治療に関しては、世界的にみてスタンダードな状況ではありません。

世界的に推奨されている治療方法は、CDC(アメリカ疾病管理予防センター)が策定した治療指針によるもので、多くの国が採択しています。

梅毒治療の世界の標準はベンザチンペニシリンの筋肉注射です。しかし、国内においてベンザチンペニシリンは梅毒治療では使用されておらず、多くの国で行われている標準的な梅毒治療であるのに使用することができません。

 

日本でベンザチンペニシリンが承認されていない理由

日本でベンザチンペニシリンが承認されていない理由は、過去に起きた医療事件が影響していると推測されます。事件は1956 年(昭和 31 年)に起こりました。当時の東京大学法学部教授が、抜歯後の化膿止めの目的でペニシリンの注射を受け、その直後に胸苦しさを訴えてそのまま意識不明となり亡くなられました。

このペニシリンショック死事件は多くのメディアが報道して社会問題となりました。事件以降、ペニシリンは使用中止や他の抗生物質製剤への切り換えによって、消費量は激減していきます。このような経緯が影響してか、現在はベンザチンペニシリンを梅毒治療の目的で使用することができません。梅毒感染患者の増加に伴い、ベンザチンペニシリンの筋肉注射を梅毒の治療として使用する取り組みが、有識者の間で議論されています。しかし、2018年現在も結論はでていません。

 

梅毒の正しい情報を

梅毒感染の拡大が注目される中、ネットの書き込みなどで『痛風の薬が梅毒の治療にも有効である』といった情報を見たり、検索エンジンを使用して『梅毒』と打ち、予測キーワードに『プロベネシド』と現れるのを見た方も少なくないと思います。日本性感染症学会の治療ガイドラインには、痛風の治療で用いる『プロベネシド』という薬は表記されていませんが、他国の梅毒治療ガイドラインには、ペニシリンとプロベネシドの併用を推奨している国もあります。プロベネシドは、血液中の尿酸値を下げるために使用する薬です。ペニシリンの腎臓排泄を抑制することで、血中濃度を安定させる効果が期待できます。

 

治療する医師によっては、海外の研究結果やガイドラインを参考にして、梅毒の治療にプロベネシドを使用することもあります。研究により、プロベネシドを使用した場合とそうでない場合とでは、ペニシリンの血中濃度の変化に有意差があることが立証されていますが、その結果が梅毒治療成績に有意差があるか否かについては、臨床データが乏しいためよくわかっていません。そのため、日本性感染症ガイドラインでも現時点では、プロベネシドの併用を推奨していません。抗生剤の血中濃度を長期間保つことには多くの長所があります。しかし、副作用のリスクが高まる危険性もあるため、自己判断で薬を多く飲んだり、輸入代行業者からプロベネシドを購入することはおすすめできません。

インターネット上には様々な情報が玉石混交していますが、薬は医師の指示通り用法・用量を守って正しく飲むようにしてください。