梅毒に感染すると、感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、時間の経過とともに様々な症状が現れます。その間、症状が消失する時期があり、これが原因で病気の発見が遅れることがあります。初期症状には大きくわけて13種類の症状があります。各種類の症状は以下になります。

 

初期硬結(しょきこうけつ)

梅毒に感染しても3日から3週間ぐらいは何も症状が出ない時期が続きます。

その後、初期症状として、梅毒の原因菌である『トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)』が侵入した部分に菌が増殖し、軟骨のような小さな硬いしこりができます。これを初期硬結(しょきこうけつ)と言います。

女性の場合、小陰唇や大陰唇周辺の皮膚や子宮膣部にできることが一般的です。初期硬結ができた場合、個人差はありますが、ほとんどの場合、痒みや痛みはありません。

女性の性器は男性の性器とは異なり、身体の中に入り組んでいる構造のため、子宮膣部に初期硬結(しょきこうけつ)が現れても自身で気がつくことは困難とされています。

その他、感染者とのキスや性器を舐めるような接触があった場合、口の中の粘膜や咽頭周辺の粘膜にできることもあります。軟骨ぐらいの硬さが一般的ですが、個人差があります。

特徴として、時間とともに自然に消えてしまうことがあるため、初期硬結ができたとしても、消えるまで気がつかず、症状が全く無いと思う人も多くいらっしゃると思います。症状の発生頻度は、感染者全ての15%程度で発生すると言われています。

初期硬結はそのまま放置しているとキレイに消えてしまいますが、その一部で皮膚が傷になり潰瘍になることがあります。

 

硬性下疳(こうせいげかん)

初期硬結(しょきこうけつ)の一部で、皮膚が傷になり潰瘍ができたように見えることがあります。これを硬性下疳(こうせいげかん)といいます。硬性下疳(こうせいげかん)の特徴として、発生しやすい場所は、初期硬結(しょきこうけつ)と同じく、女性の場合は、小陰唇や大陰唇周辺の皮膚や子宮膣部にできることが一般的です。女性の性器は男性の性器とは異なり、身体の中に入り組んでいる構造のため、子宮膣部に初期硬結(しょきこうけつ)が現れても自身で気がつくことは困難とされています。

その他、感染者とのキスや性器を舐めるような接触があった場合、口の中の粘膜や咽頭周辺の粘膜にできることもあります。

硬性下疳(こうせいげかん)は、症状の印象から、痛みや痒みが強いような印象がありますが、そのほとんどは痛みや痒みなどの自覚症状は伴いません。しかし、皮膚がびらん・潰瘍を形成するため、皮膚のバリア機能が低下し、一般細菌やカンジダなどの真菌に重複感染した場合、痛みや痒みを伴うこともあります。

硬性下疳(こうせいげかん)の症状はヘルペスや一般細菌に感染した時のような皮膚症状なので、視診だけで病気を特定することは皮膚科の専門医でも容易ではありません。また、時間の経過とともに症状が消失してしまうため、症状に気づかれたとしても、自然治癒したと誤認してしまう方が非常に多いのも問題となっています。

近年、性行為の多様化により、陰部周辺だけでなく、口腔粘膜や咽頭周囲の粘膜にも症状が現れる方が増えています。また、初期硬結(しょきこうけつ)の症状がなく、突然、硬性下疳(こうせいげかん)の症状が出現することもあるので、『しこりがないから梅毒ではない。』と考えることは大変危険です。

症状の発生頻度は、感染者全ての85%程度で発生すると言われています。

その他、硬性下疳(こうせいげかん)の症状に類似した症状として軟性下疳(なんせいげかん)という病気があります。

軟性下疳(なんせいげかん)は、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)と呼ばれる細菌が原因となる性感染症です。硬性下疳(こうせいげかん)に比べ、しこりが柔らかいことと、痛みが強い壊疽性潰瘍(えそせいかいよう)と鼠径部(そけいぶ)のリンパ節の化膿性炎症を伴うことが最大の特徴です。日本国内での発症例は少なく、特に東南アジアやアフリカなどの熱帯・亜熱帯地域の感染者が多いとされています。

 

無痛性横痃(むつうせいおうげん)

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が感染した周囲のリンパ節が腫脹する状態です。一般的に無痛性のリンパ節腫脹が多いですが、痛みを伴うこともあります。

梅毒の感染経路で最も多いのが性器周囲のため、鼠径部(そけいぶ)のリンパ節が腫脹することは有名ですが、セックスの多様化によりキスやオーラル・セックスによって咽頭(のど)から感染して頸部のリンパ節腫脹が起こることもあります。

梅毒の感染によって鼠径部、または頸部のリンパ節が腫脹する時、多くは両側共に腫脹しますが、片側のみが腫脹することもあるため注意が必要です。

また、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が性器や咽頭に感染しても横痃(おうげん:リンパ節の腫脹)が起こらないケースもあるため、感染のリスクがある方は積極的に検査を受けられることをお薦めします。

咽頭炎・扁桃炎などといった風邪症候群によってもリンパ節の腫脹が起こるため、症状だけで梅毒の鑑別を行うことは非常に困難とされています。

痛みがない鼠径部・頸部のリンパ節の腫脹が続くときは梅毒の感染を考え検査をすることをお薦めします。

 

梅毒性バラ疹(ばいどくせいばらしん)

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)に感染後、約3ヶ月から3年にかけて梅毒が原因で発症する発疹です。文献によっては斑状梅毒疹(はんじょうばいどくしん)とも言われます。

好発部位としては、体幹を中心に顔面や手足などにもみられる、爪くらいの面積の斑点です。特に手のひらや足の裏の皮膚にも皮疹が見られるのが特徴的な所見とされています。

梅毒性バラ疹は淡紅色をしており、あまり目立ちません。中期症状としては比較的早い段階から見られます。痛みや痒みなどの自覚症状が無く、数週間ほどで消えるため、見過ごされやすいので注意が必要です。

発生頻度は、全体の約26%の方に症状が出るといわれています。

体にこのような皮疹(ひしん)が出た時、薬疹やジベルばら色粃糠疹(ジベルばらいろひこうしん)といった梅毒とは関係ない理由で同様な症状がでるため、視診だけで病気を判断せず、検査を受けることが大切だとされています。

薬疹とは、言葉の通り体内に摂取された薬剤,あるいはその代謝産物によって,皮膚や粘膜に皮疹を起こすことです。

ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)とは、全身あるいは体幹(お腹や背中)を中心に紅斑(赤い斑点)がたくさんできる病気です。多発性の紅斑の体幹における配列模様がクリスマスツリー様に見えるのが特徴とされています。

梅毒性バラ疹と同様に発熱や倦怠感などの全身症状はほとんどなく、皮膚病に有りがちな痒みもほとんどないのがもう一つの特徴です。

この病気の原因は、何らかのウイルス感染による二次的な反応と考えられていますが、原因は明らかにされていません。この病気自体が伝染することはありません。

また、ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)は、ほとんどの場合1~2ヶ月で痕を残さずに自然治癒するため、梅毒性バラ疹との違いは見た目では困難とされています。

いずれにせよ、皮疹が現れた時は積極的に病院を受診することが大切です。

 

丘疹性梅毒(きゅうしんせいばいどく)

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)に感染後、約3ヶ月後から症状が出現する梅毒2期疹の中で最も多いとされる丘疹(きゅうしん)です。好発部位は体幹・顔面・四肢・手掌・足底など多岐にわたります。

症状としては、えんどう豆ほどの大きさの赤褐色の丘疹がいたる所に多発します。発生頻度は約65%程度の確率で出現するといわれています。

丘疹性梅毒症状は単独で症状が出現するより、梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)や扁平コンジローマ、膿疱性梅毒(のうほうせいばいどく)や梅毒性爪周囲炎(ばいどくせいそうしゅういえん)と共に同時に発症することが多いとされています。

症状の出現パターンには個人差があり、時間の経過とともに症状が一時的に改善する傾向にある方もいれば、症状が時間とともに増悪し、痛みや痒みなど苦痛を感じることもあるため、早期に原因を調べ、適切に治療を行うことが大切です。

 

梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)

梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)は、第2期梅毒の代表的な症状のひとつです。

乾癬(かんせん)という病気自体は、梅毒が原因で必ず起こる病気でなく、多くの場合は遺伝的素因の他に様々な環境因子(不規則な生活や食事、ストレス、肥満、特殊な薬剤など)が加わると発症すると言われている病気です。

特徴的な症状として、銀白色の鱗屑(りんせつ:皮膚の粉)をともない境界明瞭な盛り上がった紅斑が皮膚に現れますが、梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)の場合、症状の好発部位は手掌・足底と言った、通常の乾癬の好発部位とは異なった場所に現れるのが特徴的です。症状としては浸潤を伴う鱗屑性紅斑(りんせつせいこうはん)なので乾癬(かんせん)に類似していますが、梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)の場合、症状の原因は梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)の増殖によるものです。

梅毒に感染した時の発生頻度は約20%で発症すると言われています。

 

扁平コンジローマ

扁平コンジローマは第2期梅毒の臨床症状の一つです。

女性の場合、症状の好発部位は小陰唇や大陰唇周辺の皮膚や子宮膣部にできることが一般的です。扁平コンジローマができた場合、個人差はありますが、ほとんどの場合、痒みや痛みはありません。

女性の性器は男性の性器とは異なり、身体の中に入り組んでいる構造のため、子宮膣部に扁平コンジローマが現れても自身で気がつくことは困難とされています。ごく稀に腋窩(脇の下)や乳房下部(にゅうぼうかぶ)に現れることもあります。共通した特徴として、皮膚同士が摩擦し易い箇所に好発します。特徴的な症状として、浸潤した紅色の扁平隆起性の丘疹(きゅうしん)です。経過と共にひとつひとつの丘疹が融合し、台形状の結節(けっせつ)に変化するのも特徴的な経過です。

丘疹(きゅうしん)が生じている場所には大量のトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が存在するため、症状が表れている場所に他者の粘膜や皮膚の接触があると感染させる可能性が高まるため注意が必要です。症状の出現頻度は約5%程度だと言われています。

類似した症状を起こす病気として尖圭コンジローマとボーエン様丘疹症(ボーエンようきゅうしんしょう)があります。

尖圭コンジローマ(せんけいこんじろーま)の原因は低リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれ性行為で感染するウイルスが原因です。高リスク型・低リスク型いずれのHPVに感染したとしても、ほとんどは一過性の感染で、免疫力により自然に排除されるといわれています。ただし、低リスク型HPVに感染した場合、尖圭コンジローマの原因になります。低リスク型HPVに持続感染することによって、3週間~8ヶ月(平均2.8ヶ月)で性器や尿道・膣・肛門などに鶏のトサカあるいはカリフラワー状のイボ(尖圭コンジローマ)が現れます。一般的にイボに痛みはありませんが、人により軽度の痒みが出現することがあります。

ボーエン様丘疹症(ボーエンようきゅうしんしょう)とは、高リスク型HPVの感染によるもので、外陰部に多発する黒褐色の丘疹および局面です。自然消退もありますが、稀に皮膚癌に移行するため注意が必要です。尖圭コンジローマ、ボーエン様丘疹症(ボーエンようきゅうしんしょう)共に扁平コンジローマの症状に類似しているため、視診のみで鑑別することは困難です。症状がある時は、性感染症内科(性病科)や皮膚科を積極的に受診することをお薦めします。

 

膿疱性梅毒(のうほうせいばいどく)

膿疱性梅毒(のうほうせいばいどく)の典型的な症状は、顔面や体幹や四肢などの皮膚に無数の小膿疱(しょうのうほう:膿が溜まったできもの)を形成します。第2期梅毒疹のなかでも非常に稀な皮膚症状です。顕性梅毒(けんせいばいどく:症状が認められる梅毒)のうち約3%程度の方に見られる症状です。皮膚症状だけでなく、発熱や全身の疲労感などの全身症状も随伴することが多いとされています。膿疱は時間の経過とともに潰れたり痂皮化(かひか:かさぶたのようになること)したりします。

膿疱の膿には大量のトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が存在するため、性行為だけでなく、他者の粘膜や皮膚に接触することにより感染する危険性があるため、日常生活においても注意が必要とされます。使用したタオルや寝具などの共有は極力避けたほうが賢明でしょう。

また、膿疱性梅毒(のうほうせいばいどく)を呈する方に見られる傾向として、極端に栄養状態や免疫状態が不良の方に発症することが多いとされています。HIVなどの免疫力を下げるような感染症や悪性新生物(あくせいしんせいぶつ:癌など)の病気など罹患している可能性もあるため、梅毒の感染だけでなく他の病気の検査や治療を行うことが大切です。

 

梅毒性脱毛(ばいどくせいだつもう)

梅毒性脱毛(ばいどくせいだつもう)は第2期梅毒の臨床症状の一つです。症状としては直径3~5mmほどの円形脱毛もしくは、頭部の毛、全体が薄くなるびまん性脱毛が特徴的です。好発部位としては頭部だけでなく眉毛にも現れることがあります。発生頻度は顕性梅毒(けいせいばいどく:症状が表れている梅毒)の約5%程度で発症すると言われています。

薄毛・脱毛の要因となるものとして梅毒などの感染症が原因で起こる随伴症状の他に3つの要因があります。

ほとんどの場合は男性ホルモンからできるジヒドロテストステロン(DHT)と酵素の活動量の障害やストレスや生活習慣から影響する血行不良や栄養不足とされています。

稀に梅毒のような病気に感染したときに現れる随伴症状や病気に対して使用する薬剤の副作用として現れる場合もあります。脱毛や薄毛が気になる時は、原因を明らかにして、もっとも有効な治療を早期から行うことが大切です。

 

梅毒性白斑(ばいどくせいはくはん)

日本国内では毎年、約100万人近い方が発症する白斑(尋常性白斑:じんじょうせいはくはん)と言う皮膚疾患があります。症状としては、体幹や顔面、頭皮や四肢末端部までの皮膚の一部が脱色し、白く見えるような状態に変化します。原因は明らかにされていませんが、遺伝や自己免疫疾患、環境要因が関係されているといわれています。

皮膚が白く見える原因は皮膚の基底層に分布するメラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で減少・消失するからです。メラノサイト(色素細胞)は紫外線から皮膚を守るためにメラニン色素を産生しますが、その減少、消失により皮膚の色が白く抜けていきます。

梅毒に感染した時に、この白斑(尋常性白斑:じんじょうせいはくはん)に似た症状が現れることがあります。症状は体幹や頸部・頭部や四肢の皮膚の一部が脱色し、白く見える状態になります。顕性梅毒(けんせいばいどく:症状が現れる梅毒)の約3%程度の確率で発症するといわれています。

梅毒性白斑を発症した時、高い確率で梅毒性脱毛(ばいどくせいだつもう)を併発するともいわれています。白斑や脱毛の症状だけでは、梅毒と鑑別することは困難なため、症状が現れたときには診察・検査を行い、原因に対して最も有効な治療を受けることが大切です。

 

梅毒性爪炎・爪囲炎(ばいどくせいそうえん・そういえん)

爪炎(そうえん)・爪囲炎(そういえん)とは、爪(つめ)の内部や周囲の皮膚が赤く腫れて炎症を起こした状態をいいます。原因としては、細菌や真菌の感染や、感染とは無関係の湿疹(しっしん)によって起こることもあります。いずれも爪の内部や周囲の皮膚が赤く腫れ、爪と皮膚の間にすきまができて、圧迫すると痛みがあり多少の膿が出ることもあります。稀に潰瘍を形成することもあります。

梅毒2期においても、一般の爪炎(そうえん)・爪囲炎(そういえん)を起こすことがあります。炎症の原因は梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)のため、膿や傷自体が他者の粘膜や傷に接触すると性行為以外でも感染する可能性があるため注意が必要です。症状だけでは梅毒の感染を特定することが困難なため、症状が現れた時には積極的に診察・検査を受けて、原因に対して最も有効な治療を行うことが大切です。

 

梅毒性粘膜疹(ばいどくせいねんまくしん)

梅毒感染の原因となるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)がキスや相手の性器を舐めることで口から感染した時、梅毒2期にみられる症状の一つです。

粘膜疹の好発部位は口唇(こうしん)や口腔内粘膜、舌や扁桃部(へんとうぶ)の粘膜とされています。顕性梅毒(けんせいばいどく:症状が現れる梅毒)の約20%程度で発症するといわれています。症状としては、紅斑もしくは乳白色の口内炎のような症状が特徴的です。

症状として口内炎や扁桃炎(へんとうえん)のような症状に酷似しているため、視診での鑑別は困難とされています。感染機会があり、症状が現れた時は症状の強弱の有無や消失の有無に関わらず検査を受けるとよいでしょう。

 

梅毒性アンギーナ

梅毒性アンギーナの好発部位は扁桃(へんとう)や軟口蓋(なんこうがい)の粘膜です。顕性梅毒(けいせいばいどく:症状が現れる梅毒)の約13%程度の方が発症するといわれ、臨床症状はびらんや潰瘍を伴う発赤や腫脹です。扁桃(へんとう)や軟口蓋(なんこうがい)が左右対象に赤く腫れ上がることによって、『赤い蝶が羽を広げた』ように見えることがあります。

ただし、梅毒性粘膜疹(ばいどくせいねんまくしん)や梅毒性アンギーナの症状は、口内炎や急性の扁桃炎(へんとうえん)、咽頭炎(いんとうえん)などに類似した所見を呈することがあるため、視診での鑑別は困難とされています。

症状が現れた時には放置せず、検査や診療を受けるとよいでしょう。