全ての病気に共通して言えることとして、『早期発見・早期治療』を行うことがとても大切です。何かしらの病気に感染した時の体からのサインを正確にキャッチする必要があります。

梅毒の原因菌

梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が感染すると、初期症状として体の色々な箇所に『しこり』ができることがあります。

梅毒に感染しているか否かについては血液検査をおこなわないと診断することができません。体の異常に気づき、病院に足を運ぶことができるためにも正確な医学的知識を身につけていることはとても大切です。

体の『しこり』からわかる梅毒の初期症状

体の『しこり』からわかる梅毒の初期症状は以下の通りになります。

 

初期硬結(しょきこうけつ)

梅毒に感染しても3日から3週間ぐらいは何も症状が出ない時期が続きます。

その後、初期症状として、梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が侵入した部分に菌が増殖し、軟骨のような小さな硬い『しこり』ができます。これを初期硬結(しょきこうけつ)と言います。

男性の場合、よくできる場所としては、亀頭(きとう)や陰茎(いんけい)、性器周辺の皮膚にできることが一般的です。最も多くできる場所は、亀頭と陰茎の間の部分(冠状溝:かんじょうこう)です。

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)は、傷から侵入することが多いため、初期硬結ができたとしてもほとんどの場合、一個~数個しかできませんが、オーラル・セックスによってトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)に感染した場合、感染した場所に無数の初期硬結が発症することがあります。これは、オーラル・セックスにより、相手の歯が亀頭や陰茎に当たることによって、亀頭粘膜(きとうねんまく)や陰茎の皮膚に目には見えない傷を作っていることによる影響があると考えられます。

その他、感染者とのキスや性器を舐めるような接触があった場合、口の中の粘膜や咽頭周辺の粘膜にできることも稀にあります。軟骨ぐらいの硬さが一般的ですが、個人差があります。

初期硬結(しょきこうけつ)ができた場合、ほとんどの場合、痒みや痛みはありません。

特徴として、時間とともに自然に消えてしまうことがあるため、初期硬結ができたとしても、消えるまで気がつかず、症状が全く無いと思う人も多くいらっしゃると思います。症状の発生頻度は、感染者全ての15%程度で発生すると言われています。

初期硬結はそのまま放置しているとキレイに消えてしまいますが、その一部で皮膚が傷になり潰瘍になることがあります。

 

硬性下疳(こうせいげかん)

初期硬結(しょきこうけつ)の一部で、皮膚が傷になり潰瘍ができたように見えることがあります。これを硬性下疳(こうせいげかん)といいます。硬性下疳(こうせいげかん)の特徴として、発生しやすい場所は、初期硬結(しょきこうけつ)と同じく、亀頭(きとう)や陰茎(いんけい)、性器周辺の皮膚にできることが一般的です。最も多くできる場所は、亀頭と陰茎の間の部分(冠状溝:かんじょうこう)です。

その他、感染者とのキスや性器を舐めるような接触があった場合、口の中の粘膜や咽頭周辺の粘膜にできることも稀にあります。

硬性下疳(こうせいげかん)は、症状の印象から、痛みや痒みが強いような印象がありますが、そのほとんどは痛みや痒みなどの自覚症状は伴いません。しかし、皮膚がびらん・潰瘍を形成するため、皮膚のバリア機能が低下し、一般細菌やカンジダなどの真菌に重複感染した場合、痛みや痒みを伴うことがあります。

硬性下疳(こうせいげかん)の症状はヘルペスや一般細菌に感染した時のような皮膚症状なので、視診だけで病気を特定することは皮膚科の専門医でも容易ではありません。また、時間の経過とともに症状が消失してしまうため、症状に気づかれたとしても、自然治癒したと誤認してしまう方が非常に多いのも問題となっています。

近年、性行為の多様化により、陰部周辺だけでなく、口腔粘膜(こうくうねんまく)や咽頭周囲の粘膜にも症状がでる方が増えています。また、初期硬結(しょきこうけつ)の症状がなく、突然、硬性下疳の症状が出現することもあるので、『しこりがないから梅毒ではない。』と考えることは大変危険です。

症状の発生頻度は、感染者全ての85%程度で発生すると言われています。

その他、硬性下疳(こうせいげかん)の症状に類似した症状として軟性下疳(なんせいげかん)という病気があります。

軟性下疳(なんせいげかん)は、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)と呼ばれる細菌が原因となる性感染症です。硬性下疳(こうせいげかん)に比べ、しこりが柔らかいことと、痛みが強い壊疽性潰瘍(えそせいかいよう)と鼠径部(そけいぶ)のリンパ節の化膿性炎症(かのうせいえんしょう)を伴うことが最大の特徴です。日本国内での発症例は少なく、特に東南アジアやアフリカなどの熱帯・亜熱帯地域の感染者が多いとされています。

 

無痛性横痃(むつうせいおうげん)

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が感染した周囲のリンパ節が腫脹する状態です。リンパ節が腫脹した場所を触ると、コリコリとした『しこり』を感じることがあります。一般的に無痛性のリンパ節腫脹が多いですが、痛みを伴うこともあります。

梅毒の感染経路で最も多いのが性器周囲のため、鼠径部(そけいぶ)のリンパ節が腫脹することは有名ですが、セックスの多様化によりキスやオーラル・セックスによって咽頭(いんとう:のど)から感染して頸部(けいぶ:首)のリンパ節腫脹が起こることもあります。

梅毒の感染によって鼠径部、または頸部のリンパ節が腫脹する時、多くは両側共に腫脹しますが、片側のみが腫脹することもあるため注意が必要です。

また、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)が性器や咽頭に感染しても横痃(おうげん:リンパ節の腫脹)が起こらないケースもあるため、感染のリスクがある方は積極的に検査を受けられることをお薦めします。

咽頭炎(いんとうえん)・扁桃炎(へんとうえん)などといった風邪症候群によってもリンパ節の腫脹が起こるため、症状だけで梅毒の鑑別を行うことは非常に困難とされています。

痛みがない鼠径部・頸部のリンパ節の腫脹が続くときは梅毒の感染を考え検査をすることをお薦めします。

 

丘疹性梅毒(きゅうしんせいばいどく)

トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)に感染後、約3ヶ月後から症状が出現する梅毒2期疹の中で最も多いとされる丘疹(きゅうしん)です。好発部位は体幹・顔面・四肢・手掌・足底など多岐にわたります。

症状としては、えんどう豆ほどの大きさの赤褐色の丘疹がいたる所に多発します。

丘疹を触るとコリコリとしたしこりのように感じることがあります。硬さには個人差があります。

発生頻度は約65%程度の確率で出現するといわれています。

丘疹性梅毒症状は単独で症状が出現するより、梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)や扁平コンジローマ、膿疱性梅毒(のうほうせいばいどく)や梅毒性爪周囲炎(ばいどくせいそうしゅういえん)と共に同時に発症することが多いとされています。症状の出現パターンには個人差があり、時間の経過とともに症状が一時的に改善する傾向にある方もいれば、症状が時間とともに増悪し、痛みや痒みなど苦痛を感じることもあるため、早期に原因を調べ、適切に治療を行うことが大切です。