梅毒の検査

梅毒の判断を行う際には、TP抗体検査(TPHA法)、またはTP抗体検査とRPR抗体検査の両方を用います。過去に梅毒感染がなく、最終リスクから4週間経過している場合はTP抗体検査を行い、即日で結果が判明します。

ただし、感染機会から2ヶ月未満の場合には、TP抗体が反応しない梅毒感染初期である可能性も考慮し、当院ではRPR抗体検査も同時に行っています。

RPR抗体検査が陰性の場合、4週間以上経過した感染機会について、ほぼ梅毒を否定することができます。梅毒を完全に否定するためには、最終リスクから2ヶ月以上経過後に検査を受けることが必要です。

 

梅毒の検査で現在主流となっているのは「RPR法」と「TPHA法」です。それぞれのメリットとデメリット、具体的な検査内容について説明します。

RPR法について

RPRは「Rapid Plasma Reagin」の略で、「RPRカードテスト」とも呼ばれています。カーボン粒子にカルジオライピン、レシチン(梅毒トレポネーマの脂質)を吸着させ、そこへ患者さんから採取した血液を加えた時、カーボン粒子の集まりが見られれば陽性です。

この検査で使われる脂質は梅毒以外の病気にもみられるものなので、梅毒に感染していなくても陽性を示してしまうことがありますが、検査を比較的早い段階(感染後2~4週間)から行うことができるというメリットがあります。また、治療が進むにつれてリン脂質抗体価は下がっていくので、経過をチェックするのにも便利な方法です。

TPHA法について

TPHAは「Treponema Pallidum Hemagglutination」の略で、梅毒トレポネーマに特異の抗原を検出する検査方法です。そのため、RPR法のように他の病気に反応してしまう可能性が低く、より正確性の高い結果が得られるというメリットがあります。

しかし、陽性反応を示すようになるまでの期間が長いため(感染後4~6週間)、すぐにでも結果を知りたいという人には向きません。また、治療が完了した後も長期に渡って陽性反応を示し続けることが多いので、梅毒の既往歴のある人には治療結果の判定にも不向きです。

 

梅毒の検査結果の見方や注意点について

「RPR法」については、早い時期から検査ができるものの、擬陽性(梅毒に感染していないにも関わらず、陽性になる)という結果が出てしまうこともあります。

これは、抗原であるリン脂質が梅毒トレポネーマとは直接関係のないものであるため、梅毒以外の疾患でも陽性を示す可能性があるから。

したがって、医療機関によってはまずRPR法でざっくりと検査をした後、さらにTPHA法を使って念入りに調べるところもあります。

「最初から正確な検査結果を知りたい」という場合も、TPHA法を選んだほうが良いでしょう。

また、検査結果をすぐに知りたいという場合は即日検査を受けることもできます。

これは「梅毒TP抗体クイック検査」と呼ばれるもので、病院であれば15~30分、保健所でも1時間以内に結果を知ることができるので非常に便利です。

ただし、この方法が使えるのは初めて梅毒に感染した人のみ。

一度でも感染した経験があると、たとえ治療によって治癒していてもTP抗体が検出されてしまうので、その場合はRPR法やTPHA法で検査を受けてください。

また、感染から日が浅いうちに受けても抗体の数値が十分に上がっておらず、本当は陽性でも陰性と出てしまうこともあるので、最低でも6週間経過してからの検査となります。

 

<RPR法・TPHA法の検査結果の見方>

1:RPR法、TPHA法ともに陰性の場合/梅毒には感染していない。ただし、非常に稀ではあるものの、初期梅毒の可能性もあり。

2:RPR法が陽性、TPHA法が陰性の場合/RPR法においての擬陽性。ただし、稀に初期梅毒の可能性もあり。

3:RPR法、TPHA法ともに陽性の場合/梅毒に感染している、もしくは梅毒の治療経験がある。

4:RPR法が陰性、TPHA法が陽性の場合/梅毒の治療後である。ただし、稀にRPR法における偽陰性の可能性あり。

 

梅毒の検査費用

梅毒に感染しているかどうかを知るには、以下の3つの方法があります。

【病院で検査する】

梅毒の検査は保険診療の病院でも受けることができますが、保険診療の場合は症状がないと費用の全ては自費扱いとなるので注意が必要です。検査を希望する場合は、保険診療の病院、もしくは自由診療をおこなっている病院の性感染症内科・泌尿器科・皮膚科などを受診してください。事前に検査をおこなっているかどうか、電話などで確認してからの方がよいでしょう。費用は病院により異なりますが、目安としては2,000円~8,000円程度かかるようです。

匿名での検査を希望するなら、保険を使うより自費での検査が便利です。受付で名前を呼ばれたり、会社や家庭に健康保険のお知らせが届いたりする心配がないので、気楽に受けることができます。(但し、医療機関によります)

また、保健所では原則無料(有料の施設もあり)で匿名による検査が受けられますが、実施日があらかじめ決められており、結果報告は対面で行われるので、仕事が忙しい場合は利用しにくいといったデメリットがあります。

【郵送の検査キットで調べる】

病院に足を運ぶことが難しい場合、郵送の検査キットが便利です。郵送検査会社により差はありますが、検査費用は2,000~5,000円程度です。

病院や保健所での検査はどうしても対面になるし、受け付けてくれる時間も限られているので、それが困るという場合は郵送で検査が受けられるキットを利用する方法もあります。

キットは通信販売で購入することができ、自分で血液を採って送り返す仕組みです。(検査は前述のTPHA法となります)

検査には個人情報は一切必要なく、結果もWEBで見ることができるので、一切他人と顔を合わせずに済むというメリットがあります。

【保健所で検査を受ける】

一部の保健所では無料で梅毒の検査を受けることが可能です。しかし、結果判明までに数日の時間を要することや、検査結果を、再度聞きに行く手間があるなどデメリットもあります。

予約は電話で行いますが、この時、名前や住所などの個人情報を伝える必要はありません。当日は決められた時間に保健所へ行き、他の人と一緒に順番を待つのですが、プライバシーに配慮して仕切りを使う施設も増えてきているようです。

梅毒の治療方法

日本性感染症学会では、梅毒治療の第一選択薬をペニシリンと定めています。

梅毒の病原体である「梅毒トレポネーマ」を死滅させる効果があり、現在までにペニシリン耐性株の発生はありません。海外では、1回だけの投与で済む注射薬を使うのが一般的ですが、日本では、ペニシリンの注射薬が使えません。また、ペニシリンにアレルギーがある人の場合は、「塩酸ミノサイクリン」を使用して治療を行います。妊婦の方に対して治療を行う場合は、胎児への影響も留意し、『アセチルスピラマイシン』を使用して治療を行うケースもあります。

これらの内服薬の投与期間は、第Ⅰ期梅毒で2〜4週間、第Ⅱ期梅毒で4〜8週間と、長期に及びます。症状や検査データを元に治療方針が決定されます。

 

JH反応(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)について

梅毒の治療を開始すると、数時間から数日以内に、発熱や悪寒、筋肉痛、頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が現れることがあります。これはJH反応(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)というもので、薬の副作用ではありません。

JH反応は、梅毒の菌に近いスピロヘーター属の菌に対して治療を行う時にも出現する可能性があります。具体的には回帰熱、ライム病、レプトスピラ症といった、ペット、家畜などの動物、虫を介して感染する病気の治療を行う時にも共通の症状が出る可能性があります。薬の副作用ではありません。抗生剤で菌が破壊された時に血液中に散布される毒素の影響だと考えられています。症状も一時的なものです。

自己判断で薬の量を減らしたりせず、医師が治療を終了とするまでは、処方された薬を確実に飲むようにしましょう。また、そういう意味では、内服は仕事がお休みの時に始めるのがよいでしょう。

注意が必要なことは、抗生剤の副作用をJH反応と間違えてしまうことです。体質的に治療で使用する抗生剤にアレルギーが出た場合、薬を飲み続けるかぎり、症状は悪化していくので、判断に困るときは速やかに医師に相談することが大切です。

自己判断で薬の量を減らしたりせず、医師が治療を終了とするまでは、処方された薬を確実に飲むようにしましょう。また、そういう意味では、内服は仕事がお休みの時に始めるのがよいでしょう。