梅毒の病期と症状

感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、時間の経過とともに様々な症状が現れます。その間、症状が消失する時期があり、これが原因で治療開始が遅れることにつながります。

 

梅毒 第I期:[感染部位の病変]

梅毒に感染しても、最初の3週間ぐらいは何も症状が出ない時期が続きます。その後、初期症状として、梅毒トレポネーマが侵入した部分に小さな硬いしこり(初期硬結)ができます。ほとんど場合、痒みや痛みはなく、時間とともに自然に消えてしまいます。

初期硬結はそのまま放置しているとキレイに消えてしまいますが、その一部で皮膚が傷になり潰瘍になることがあります。この状態を硬性下疳と呼びます。初期硬結と同じく痛みはほとんどなく。自然に消えてしますことがほとんどです。一部、潰瘍の部分の傷から、細菌や真菌が感染し、痛みや痒み、浸出液を伴う皮膚障害を伴うこともあるため、視診だけでなく、血液検査を行い、梅毒感染の有無について調べる必要性があります。

主な発生部位は、男性なら陰茎と周囲の皮膚、女性なら、大陰唇や小陰唇、膣内になります。キスやオーラルセックスが原因で感染した場合、口腔内・咽頭周辺の粘膜が好発部位になります。

女性の場合、膣内に初期硬結ができた場合、見えにくく、異常の早期発見が難しいため注意が必要です。感染部位周辺のリンパ節が腫脹することも典型的な特徴のひとつなので、頸部リンパ節や鼠径リンパ節が腫れた時は積極的に診察を受けることをお薦めします。

 

梅毒 第II期:[血流に乗って全身に移行]

梅毒に感染した場合、数時間の間に梅毒トレポネーマは血液に乗って全身には運ばれます。その後、全身で梅毒トレポネーマは増殖する期間があり、第 I 期梅毒で感染部位の症状が一旦消失した後におよそ4〜10週間の潜伏期を経て、手のひらや足の裏を含む全身に、多彩な皮疹、粘膜疹、扁平コンジローマ、梅毒性脱毛などが出現します。

また、発熱、倦怠感等の全身症状に加え、泌尿器系、中枢神経系、筋骨格系の多彩な症状が現れます。第I期梅毒と同様、治療をしなくても数週間〜数ヶ月程で症状は消えてしまいます。

全身性の皮膚症状として有名な症状は、全身の皮膚、特に手のひらや足のうらの皮膚にまで、赤い発疹が現れる『バラ疹』が有名です。バラ疹の他に、『丘疹性梅毒疹』と呼ばれる、赤茶色の盛り上がったような発疹や、『梅毒性乾癬』と呼ばれる、擦るとフケのようなものが出る赤い発疹が出ることがあります。

扁平コンジローマについて

扁平コンジローマは梅毒第Ⅱ期の10%程度の方にみられる症状です。梅毒性丘疹が性器や肛門周辺、乳房の下やわきの下などの湿った部位に発生した際に生じる丘疹です。尖圭コンジローマと名前が似ていますが、全く別の症状です。尖圭コンジローマは乾燥した丘疹ですが、扁平コンジローマはただれて分泌液が出るため、湿っているのが特徴です。

梅毒性脱毛について

薄毛・脱毛には大きくわけて4つの要因があります。

①男性ホルモンからできるジヒドロテストステロン(DHT)と酵素の活動量の障害

②ストレスや生活習慣から影響する血行不良や栄養不足

③他の病気に伴う随伴症状

④他の病気に対して使用する薬剤の副作用

梅毒性脱毛とは症状のひとつになります。

脱毛の種類として、直径3~5mmほどの円形脱毛もしくは、頭部の毛、全体が薄くなるびまん性脱毛が特徴的です。

梅毒の症状は、病気の進行度により4つの期間に分けることができます。

梅毒の感染が原因で起こる脱毛症状は、梅毒に感染してから、概ね3ヶ月経過したとき(梅毒Ⅱ期)に現れるといわれています。

早期神経梅毒について

梅毒に感染したことに気がつかず、長期に渡って無治療でいると、梅毒トレポネーマが中枢神経系にまでダメージを与えることがあります。早期神経梅毒では、髄膜炎や視神経に障害を与え、視力低下などの眼症状が出現することがあります。その後、症状が進行すると進行麻痺や脊髄癆を発症します。

脊髄癆について

梅毒に起因し,主に脊髄の後根と後索が侵される病気。神経痛期,運動失調期,麻痺期の3期に分けられます。神経痛期には,下肢の電撃性の疼痛,反射性瞳孔異常,下肢の腱反射消失の3症状があります。

 

梅毒 第Ⅲ期:〔感染後、数年経過した時期〕

全身に硬いコブのような非特異的肉芽腫様病変(ゴム腫)が現れます。放置しておけば自然と消えますが、跡が残ります。そして、ゴム腫は繰り返し発生するため、段々と跡が増えて外見的にひどい状態になっていきます。ゴム腫が鼻骨にできると、鼻骨がくずれて「梅毒で鼻が落ちる」と言われる状態になります。第二期までに治療を受ける感染者がほとんどのため、現在この第Ⅲ期をみることは非常に稀とされています。

ゴム種について

昔はよく『梅毒になったら鼻が落ちる』と言われていましたが、これはゴム種が鼻中隔(左右の鼻を仕切る部分)にできることに起因しておこる現象です。ゴム腫は鼻中隔だけでなく、内臓・骨・筋肉・皮膚などいたる所に症状を起こしますが、特に顔面、特に鼻・唇・前額部・頭蓋骨周辺に好発します。

 

梅毒 第Ⅳ期:〔多臓器にさまざまな障害が出現する時期〕

治療をせずそのままにした場合、数年〜数十年に及ぶ後期潜伏梅毒の経過を経て、全身の臓器に障害が出ます。

進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒では、最悪、大動脈が破裂し、死に至ることもあります。

進行麻痺および脊髄癆などに代表される神経梅毒では、病変が脊髄や脳、中枢神経にまで及び、下半身麻痺や意識障害が現れます。日常生活は困難となることは言うまでもありません。

ここまで進行することは今の時代、ほとんどないと言われていますが、この時期ではペニシリンの治療をもってしても治癒が困難となることから早期の発見と早期の治療が大切とされています。

 

先天性梅毒について

梅毒に感染している母親から、胎盤を通じて胎児に感染した場合、先天性梅毒となります。先天性梅毒であっても、出生時において3人に2人程の割合で無症状であり、身体所見が正常とされます。

早期先天性梅毒では、出生時~生後3カ月頃に水疱性発疹、斑状発疹、丘疹状の皮膚病変に加え、鼻閉、全身性リンパ節腫脹、肝脾腫、骨軟骨炎などの症状が認められます。

晩期先天性梅毒では、乳幼児期は症状が出現せずに経過し、学童期以後に『ハッチンソンの3徴候』(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯)と呼ばれる症状が現れます。

実質性角膜炎では、慢性的に角膜の炎症が起こり、軽度から中等度の視力障害が生じます。内耳性難聴は、内耳の障害により音の刺激が脳まで到達できず、聴力障害を起こす病気です。ハッチンソン歯は、上顎の前歯が好発部位であり、歯のエナメル質形成不全で、歯の先端の中心が欠けたように見えるのが特徴的です。

 

口腔咽頭梅毒について

『口腔咽頭梅毒』は、その名の通り、梅毒トレポネーマが口やのどの粘膜から侵入して発症するものです。

発症時期は主に第Ⅰ期~第Ⅱ期に集中しています。第Ⅰ期では、梅毒トレポネーマが接触した部位(唇・舌・のど)にしこり(初期硬結)ができます。個人差はありますが、数週間で症状が消失します。また、第Ⅰ期~第Ⅱ期にかけて、頸部リンパ節(首の周辺にあるリンパ節)腫れたりすることがあります。

第Ⅱ期では口唇や舌、咽頭・左右口蓋扁桃に円形で鮮明な紅斑や粘膜班(乳白色)やびらん、潰瘍を発症することがあります。特徴的な所見としては、口蓋垂(のどの奥に垂れ下がっている部分)を中心に蝶が羽を広げたような形の粘膜班(梅毒性アンギーナ)を発症します。

 

梅毒に似た症状

梅毒Ⅰ期に出現する初期硬結・硬性下疳に似た病気

ヘルペス:ヘルペスの特徴的な症状として、下疳のような潰瘍や、感染部位に無数の水ぶくれを形成することがあります。

軟性下疳:軟性下疳菌であるヘモフィルス・デュクレイと呼ばれる細菌が原因となります。

硬性下疳と比べ、触ると柔らかく、痛みを伴うのが特徴的です。アフリカや東南アジアなどの熱帯、亜熱帯地方に多く発生しており、日本では終戦直後の性感染症の流行期にときどき見られた程度の稀な病気です。

細菌性皮膚炎:雑菌の感染により皮膚の発赤や潰瘍を形成することがあります。硬性下疳とは異なり、症状の急性増悪期には痛みや痒みを高頻度で伴います。

ベーチェット病:口の中や陰部に潰瘍を作ることがあります。

 

第Ⅱ期に出現する発疹に似た病気

発疹から考えられる主な病気として、現在でも原因ははっきり分かっていない乾癬や、自己免疫疾患で有名な全身性エリテマトーデス(SLE)、細菌感染が原因となる皮膚炎、ウイルス感染が原因となる帯状疱疹、皮膚悪性リンパ腫と呼ばれる癌が原因のものまで様々です。

梅毒に特徴的な発疹として、手のひらや足裏にまで発疹が認めることがあるため、気になる症状があれば、迷わずに性感染症内科や皮膚科を受診することをお薦めします。

 

第Ⅲ期・第Ⅳ期に似た病気

現在の医療水準でここまで症状が悪化することは非常に稀です。全身の皮膚にしこりのような赤い発疹や、筋肉や関節・骨に硬いゴムのような出来物ができるようなら迷わずに受診してください。

見た目の症状で分かりにくい病気として神経梅毒があります。

神経梅毒に類似した病気として、髄膜炎や脳梗塞・脳出血、統合失調症や認知症があります。頭痛や吐き気、高熱などの急性の症状の他に、神経障害や意識障害・記憶障害や人格障害を呈することがあります。そのような症状が認められる場合は、至急、脳神経外科を受診してください。